2019年12月に中国の武漢で初めて確認された新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)による感染症(COVID-19)は、世界的な大流行(パンデミック)を引き起こしました。日本国内では2020年1月に最初の患者が確認され、4月には第1波のピークを迎えました。当初は感染症法上の2類相当に指定されて、発症数が全数把握されましたが、2023年5月8日以降は5類に移行し、定点把握による週報に変わりました。

しかしその後も収束せず、2024年1月には第10波、7月には第11波に入ったとの見方がされました。新型コロナウイルスの感染者数は増減をくり返しながら今に至っており、引き続き注意の継続が望まれます。

新型コロナウイルスと変異

様々な変異株が出現

コロナウイルスは人や動物の間で広く感染症を引き起こします。これまで、人に感染症を引き起こすコロナウイルスは6種類が知られており、深刻な呼吸器疾患を生じさせることがあるSARS-CoV(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス)とMERS-CoV(中東呼吸器症候群コロナウイルス)以外は、感染しても通常の風邪などと同じ軽い症状にとどまるとされていました。しかし、今回パンデミックの起因となったのは、これまでに確認されていなかったコロナウイルスで、SARS-CoV-2(新型コロナウイルス)と命名されました。

このウイルスは、S(スパイク)、M(マトリックス)、E(エンベロープ)という3つのタンパク質と、RNAと呼ばれる核酸で構成されており、インフルエンザウイルスと同様に脂質膜で囲われているため、この膜を破壊するアルコール消毒が有効です。

新型コロナウイルスの構造を示した図。スパイク(S)、マトリックス(M)、エンベロープ(E)というタンパク質とRNA(ウイルスゲノム)からなり、脂質二重膜でできたエンベロープをアルコール消毒が破壊するようすを表している

新型コロナウイルスは、様々な変異株が出現しています。これまでにアルファ株、ベータ株、ガンマ株、デルタ株、オミクロン株などが流行してきましたが、2024年はオミクロン株から派生したJN.1が拡大し、夏にはさらにその亜系統であるKP.3が増加するなど、頻繁に株の入れ替わりが起きています(国立感染症研究所の感染症サーベイランス情報より)。

症状と合併症について

症状は千差万別

症状は、のどの痛み、鼻水・鼻づまりなどの上気道の炎症症状に加え、咳、倦怠感、発熱、筋肉痛といったものが多く、インフルエンザに類似しており、症状のみから区別することは困難です。オミクロン株に入れ替わってからは、それ以前に特徴とされた嗅覚・味覚障害の頻度が低下し、感染・伝播性は強いものの重症化する頻度は下がっており、軽症の人では発症後1週間以内に軽快することが多くなっています。

一方で、重症化リスクが高い基礎疾患をもっている人などでは感染が下気道まで至り、肺炎などの合併症を引き起こすことがあります。そのほかまれな合併症として、心筋炎、脳塞栓のうそくせんなどの血栓塞栓症もあります。

小児は一般に軽症ですが、2歳未満や基礎疾患がある場合、重症化に注意が必要です。妊婦は、妊娠後半期に感染すると早産率が高まり、妊婦本人も重症化しやすいことがわかってきました。妊娠初期・中期の感染で胎児に先天異常を起こすという報告はありません。しかし、妊婦本人は軽症でも、重篤な胎盤炎から流産や子宮内胎児死亡をきたす例があり、これらはワクチン未接種者に多いとされています。

高齢者では発熱を伴わず、せん妄などの症状を呈することもあります。80歳以上の感染者は死亡の頻度が高く、基礎疾患の増悪や心不全、誤嚥性肺炎などの発症にも注意が必要です。

検査と重症度判定について

インフルエンザと同時に検査できるキットも

新型コロナウイルス感染症の診断には当初PCR検査が用いられていましたが、診断に半日程度の時間を要することや、実施できる施設が限られていることなどが難点となっていました。その後、インフルエンザと同じように5~15分程度で簡便に検査できる抗原定性検査の簡易キットが急速に発達・普及し、今日ではほとんどの外来施設で使われています。

また、新型コロナウイルス感染症とインフルエンザが同時に流行している場合には、両方のウイルスを同時に検査できるキットが広く利用されています。

一般向けのキットで自分で検査することも可能

外来施設での検査では、「鼻腔ぬぐい液」(次の図アの方法で採取)や、「鼻咽頭ぬぐい液」(次の図イの方法で採取)、または「唾液」を検体として用います。また、若干精度が落ちる可能性がありますが、自宅で自己採取した「鼻腔ぬぐい液」や「唾液」を用いて検査できる簡易キットが一般向けに薬局などで販売されています。

「鼻腔ぬぐい」(ア)と「鼻咽頭ぬぐい」(イ)の採取方法を示した図。アは自己採取向けで鼻の入り口付近を、イは医療者向けで鼻の奥までスワブを挿入する
自分で検体を採取する場合は、鼻腔の前方のみをぬぐう安全な(ア)の方法で行う。スワブを鼻孔から2cmほど挿入して5回程度回転させながらこするように粘膜表皮を採取し、5秒ほど静置する。

重症度の判定には血液中の酸素量を測定

新型コロナウイルス感染症では重症度判定のひとつの方法として、血中酸素飽和度が用いられます。測定には、手指にクリップのようにはさんで血液中の酸素量を測定する酸素飽和度測定器(パルスオキシメーター)が使われ、その値により「軽症」「中等症Ⅰ」「中等症Ⅱまたは重症」の指標で判断されます。中等症以上で呼吸不全があると酸素投与となり、特に重症ではICU(集中治療室)で人工呼吸器による治療が必要になります。

血中酸素飽和度重症度の目安
96%以上正常または軽症
93%超~96%未満中等症Ⅰ
93%以下中等症Ⅱまたは重症

治療について

軽症でも適切な治療を

流行初期の武漢株(第1波、2020年)からデルタ株(第5波、2021年)までは、発症後1週間ほどしてから1~2割の高頻度で肺炎の合併が見られました。その場合は、酸素投与、人工呼吸器などの呼吸療法に加えて、炎症を抑えるステロイド薬や免疫抑制薬、免疫調整薬が使われました。

軽症者が大部分を占めるオミクロン株が流行している現在は、主に自宅療養、対症療法、抗ウイルス薬による薬物治療が行われています。安静のみで軽快する場合がある一方、後で症状が悪化することもあります。基礎疾患のある人や高齢者はもちろん、軽症者でも適切に治療をすることが重要です。

自宅療養

自宅などで療養する場合は、安静にして体の回復に努めます。十分な栄養摂取を心がけ、水分をこまめに摂り脱水に注意しましょう。

周囲への感染を避けるため、発症後5日間、かつ症状軽快から1日以上経過するまでは人との接触はできるだけ控えることが推奨されます。

対症療法

症状に応じて解熱薬や鎮咳薬などによる対症療法が行われています。ただし、これらの薬には熱や咳などの症状を和らげる作用がありますが、抗ウイルス薬と異なりウイルスを減らす効果はありません。

抗ウイルス薬

新型コロナウイルス感染症は、体内のウイルス量を早期に減らすことが望ましいとされ、ウイルスの増殖・拡散を阻害する作用がある抗ウイルス薬が治療に用いられることがあります。

抗ウイルス薬には、注射薬(点滴)1種類、飲み薬3種類があり(2024年8月現在)、薬剤の投与により入院・死亡のリスクを下げることや、症状の早期改善が期待できます。重症化リスクの高い高齢者、基礎疾患のある人などで積極的に用いられますが、軽症でも症状の早期改善やその後の重症化、後遺症の発症リスクなどを考慮して使用が検討されます。

処方には一定の基準があり、薬によって飲み合わせに注意が必要なこと、腎機能の悪い人、妊娠中またはその可能性がある人、特定の薬やサプリメントを服用している人では使用できないなどの制約があります。(厚生労働省『治療薬、ワクチン、医療機器、検査キットの開発について』より)

ワクチン

ワクチンには種類がある

新型コロナウイルスのワクチンは極めて短期間に開発され、臨床導入されました。特にmRNAワクチンは発症や重症化予防の効果が非常に高く、開発者は2023年度のノーベル生理学・医学賞を受賞しています。

mRNAワクチンは2024年8月現在、国内外の3社から発売されています。日本では2021年2月に接種開始となり、これまで流行のウイルス株に合わせたワクチンが接種されてきました。

2023年9月からはXBB.1.5の1価ワクチンの接種が行われてきましたが、2024年10月からはJN.1の1価ワクチンの接種が始まります。このワクチンは、現在流行しているKP.3などの亜系統にも有効と考えられています。

注意するべき主な副反応としては、注射した部分の痛み、疲労感、頭痛、筋肉や関節の痛み、寒気、下痢、発熱などがあげられます。

また、mRNAワクチンでは、接種による発熱の程度と抗体価の上昇の程度に関連性がみられています。発熱や頭痛といった副反応が出た場合の対策には解熱鎮痛薬(主にアセトアミノフェン)が使われますが、その使用によって抗体価の獲得に支障はないとされています。

新型コロナワクチンは、その製造方法の違いにより複数の種類があり、これまでにmRNAワクチン以外にウイルスベクターワクチン、組換えタンパク質ワクチンが国内で承認されてきました。(厚生労働省『新型コロナワクチンQ&A』より)

現在も新しいワクチン開発が進んでおり、2024年度からは年1回秋~冬に65歳以上の人と、60~64歳で対象となる人に定期接種が行われます。また、それ以外の人も希望者は接種できます。

感染対策

マスク、換気の継続を

新型コロナウイルスは極めて感染力が強く、家庭、学校、職場での感染拡大が多くみられています。感染の拡散阻止には、感染経路の遮断と感染者の隔離が必要です。新型コロナウイルスは、飛沫感染に加えて、径5μmマイクロメートル(0.005mm)未満の微粒子であるエアロゾル(マイクロ飛沫)や、飛沫の水分がほとんど失われた飛沫核による感染も存在すると言われています。

5類への移行以降、マスクをする人が減っていますが、流行が拡大している時は、マスクの着用やこまめな換気が推奨されます。

学校では、学校保健安全法施行規則によって、出席停止期間は「発症した後5日を経過し、かつ、症状が軽快した後1日を経過するまで」とされています。また、出席停止解除後も発症から10日を経過するまでは、当該児童に対してマスクの着用が推奨されており、一般社会でもこれとほぼ同様の対応が望まれます。

時期によりインフルエンザとの同時流行も懸念されますが、感染対策は両ウイルスでほぼ共通していますので、十分注意して日常生活を送ってください。

もし、発熱、倦怠感、のどの痛み、咳といった新型コロナウイルス感染症やインフルエンザを疑わせる症状が出た場合は、すぐに医療機関を受診し、適切な治療を受けましょう。

感染した際に外出を控えることが推奨される期間
  • 発症日を0日目(※1)として5日間は外出を控える。(※2)
  • 5日目に症状が続いていた場合は、熱が下がり、たんやのどの痛みなどの症状が軽快して24時間程度が経過するまでは、外出を控え様子を見る。症状が重い場合は、医師に相談を。

※1 無症状の場合は検体採取日を0日目とする。
※2 こうした期間にやむを得ず外出する場合でも、症状がないことを確認し、マスクの着用などを徹底する。

周りの人への配慮

発症から10日間が経過するまでは、ウイルス排出の可能性があるため、不織布マスクを着用したり、高齢者などのハイリスク者との接触を控えるなど、人へうつさないよう配慮する。(厚生労働省『新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行後の対応について』より)

新型コロナウイルスQ&A

Q. 新型コロナウイルスにかかっても再感染することはありますか? また、罹患後でもワクチンの追加接種をした方がいいのでしょうか?

一般的に、再感染は直前の感染から3か月間は起きにくいとされています。ただ、オミクロン株の流行が始まってから世界中で再感染の報告が増加しています。現在のオミクロン対応のmRNAワクチンの追加接種は、新型コロナウイルス感染症の発症や重症化を防ぐ効果が期待されており、過去に感染した人でも、罹患からの経過期間に関わらず接種がすすめられています。

Q. ワクチンの副反応を心配して接種前に解熱鎮痛薬を使用してもよいのでしょうか?

ワクチン接種後の発熱、頭痛、疼痛などに対する解熱鎮痛薬(主にアセトアミノフェン)の使用は、抗体価の獲得への影響もなく、問題ありません。ただ、接種前に予防的に解熱鎮痛薬を使用した場合の副反応の軽減効果や、抗体価の獲得低下については、まだ明らかではありません。したがって、ワクチンの副反応予防のために、接種前に解熱鎮痛薬を使用することは推奨されません。

Q. 「罹患後症状」「後遺症」とは、どういう症状ですか?

LONG COVIDとも呼ばれ、発症から3か月を経過した時点で何らかの症状が2か月以上持続し、ほかの疾患による症状として説明がつかない場合は、罹患後症状(後遺症)の可能性が考えられます。症状が改善してから一定期間経過後、新たな症状として現れる場合も報告されています。

具体的な症状は、疲労感・倦怠感、関節痛、筋肉痛、咳、喀痰かくたん、息切れ、胸痛、脱毛、記憶障害、集中力低下、頭痛、抑うつ、嗅覚障害、味覚障害、動悸、下痢、腹痛、睡眠障害、筋力低下などです。集中力低下や記憶障害など、急性期の症状として出現しにくい精神的症状が報告されているのも特徴のひとつです。

参考(公的機関の情報)

この記事は冊子「わかりやすい病気のはなし」シリーズ54『新型コロナウイルス感染症』(2024年9月発行)をもとに作成しています。