パーキンソン病 Q&A

Q1. 「パーキンソン病」とはどのような病気ですか

手がふるえたり、動作がとても遅くなったり、手足の筋肉が固くなって転びやすくなったりする病気で、中年以降で発病することの多い脳神経の病気です。まれに40歳以下で起こる方もあり、若年性パーキンソン病と言います。

Q2. この病気の患者さんはどのくらいいるのですか

人口10万人に100人~180人。65歳以上に限ると100人に約1人で、高齢者に多くなりますので、高齢化に伴い患者さんは増加します。世界的にもパーキンソン病は増えています。

Q3. この病気の原因はなんですか

手足を動かす信号は脳から出ており、それを伝えていくのにドパミンという物質が必要です。脳で作られるドパミンが減ることでパーキンソン病を発病します。ドパミンの減少はドパミンを作る細胞にアルファ-シヌクレインというタンパク質がたまってくることが原因とされています。また、この病気はほとんど遺伝しません。

Q4. この病気の症状にはどんなものがありますか

ふるえは力を入れていない時に一定のリズムでおこります。力を入れると少なくなります。

筋肉が固くなります。これは自分では気づきにくい症状ですが他の人が手や足を動かそうとすると固く感じます。顔の表情が硬くなり感情を表現しにくくなります。これを「マスク顔」と言います。

動作はゆっくりとなり急な方向転換ができなくなったり、足がすくんだりします。姿勢を保つことが難しくなり転びやすくなります。これらの症状を運動症状と言います。

ほかに便秘や頻尿、発汗、疲れやすい、立ちくらみ、気分が晴れない、興味が薄れたり意欲が低下する、などの症状も起こることがあり、非運動症状と言います。

Q5. 上のような症状が出た場合どの科に行けばいいのでしょうか

パーキンソン病はゆっくり進む病気で治療によって症状はよくなりますが、病気そのものは今のところ完全にはなおせないため難病に指定されています。脳神経内科や脳神経外科のある病院やクリニックであれば早期の診断と適切な治療が可能です。

Q6. どのような治療の方法がありますか

パーキンソン病の治療には、お薬が一般的に使用されます。これらのお薬は少なくなったドパミンの不足を補ったり、神経伝達を改善する効果があります。

散歩やストレッチなど、毎日運動を続け体力を高めることは大切です。進行すればリハビリテーションで筋力や運動の能力を維持することも重要です。

お薬が効きにくい場合に脳の手術が検討されることもあります。

はじめに

パーキンソン病と診断された患者さんやご家族へ。

パーキンソン病と診断されたとき、患者さんやご家族はみなさん少なからずショックを受けるようです。パーキンソン病はいまだ“不治の難病”のように思われていますので、当然かもしれません。

しかし、医学は日々進歩していて、そのようなイメージは過去のものです。病気そのものを治すことはできませんが、症状をコントロールし、長年、自立した生活を送ることができるようになっています。

このように治療が進歩しましたので、病気を悲観的にとらえず、正しく知ることが大切です。それによって、病気とともに生きる気構え、治療への意欲が生まれることと思います。

脳の細胞の一部分だけが減ってしまう

脳の中で、黒質でドーパミンが作られ、線条体でドーパミンが使われるようすを示した図

それでは病気の説明です。パーキンソン病は脳の中にある「黒質こくしつ」という部分の細胞が減ってしまう病気です。黒質はからだの運動を円滑に行うために必要な「ドーパミン」という神経伝達物質(脳の中で情報のやり取りをしている物質)を作る所です。

だれでも年とともに黒質の細胞が減ってきて、それは一種の老化現象と言えます。しかしパーキンソン病では、その減り方が早くなってしまうのです。脳のほかの部分(例えば物事を考えるところなど)は大丈夫なのに、なぜ黒質の細胞だけが減少するのかは、まだはっきりわかっていません。

神経の末端からドーパミンが放出され、隣の神経のドーパミン受容体に届くシナプスのしくみを示した図
診断されても生活を変える必要はありません

「食べてはいけないものは何ですか?」「やってはいけないことはありますか?」「仕事を辞めて治療に専念したほうがよいですか?」。診察室で患者さんに病名を伝えたあと、このような質問を受けることがあります。答えはいずれも「いいえ」です。パーキンソン病と診断されたからといって生活を変える必要はありません。「病気のためにできないこと」を探そうとするより、「病気があってもできること」をたくさん見つけてください。

おもな症状と病気の進行過程

筋肉や自律神経の働きが乱れてくる

ドーパミンの量が不足すると、筋肉の動きをコントロールしにくくなって、次のような症状が現れます。

振戦しんせん

いわゆる「ふるえ」のことで、しばしばこの振戦が発病に気付くきっかけになります。左右どちらかの手から始まり、同じ側の足、反対側の手・足の順に広がります。また顎がふるえることもあります。ふるえが起きる病気はいろいろありますが、パーキンソン病の場合、じっとしているときに強くなり、なにかの動作(例えば文字を書く、食事をするなど)をしているときには軽くなるという特徴があります。

筋強剛きんきょうごう

筋肉が固まったようになり、関節を動かしにくくなる症状です。指や手足、首の動かし方がぎこちなくなります。

無動むどう

からだの動きが少なくなり、素早い動作をしにくくなります。歩幅が狭くなったり、声の抑揚や顔の表情が少なくなるのも、その症状です。

姿勢反射障害

姿勢反射とは、からだが傾きかけたとき瞬間的に筋肉を微妙に動かしてバランスをとる仕組みのことです。起きているときは無意識にこれを連続的に行って、転倒を防いでいます。パーキンソン病ではこの姿勢反射がスムーズに起こらず、よろけて倒れやすくなります。ときにはそれが骨折の原因になります。

また、歩き始めの最初の一歩が出にくい「すくみ足」という症状や、いったん歩き始めると止まったり方向転換がしにくくなる「突進現象」などの歩行障害も起きてきます。

そのほかの症状

自律神経症状 便秘や立ちくらみ、排尿障害が起きやすく、また、脂っぽい汗をかきやすくなったり、よだれを垂らしやすくなります。

精神症状 抑うつ、意欲の低下、幻覚、妄想などが現れることもあります。

「パーキンソン症候群」とは

「パーキンソン症候群」という医学用語があります。パーキンソン病以外の理由で、パーキンソン病と同じような症状が現れる状態のことです。原因は、脳腫瘍や脳卒中などの病気、あるいはなにかの薬の副作用などです。

症状はゆっくり少しずつ、時間をかけて進む

パーキンソン病は進行性の病気で、医学的には症状ごとに以下のように分類されています。しかしそのスピードは遅く、時間をかけてゆっくり進みます。個人差もあり、重症度ⅠやⅡのまま進まない人もいます。なお、重症度Ⅲ以上かつ生活機能障害度Ⅱ(日常生活、通院に部分介助を必要とする状態)以上の場合は治療費の助成を受けられ、40歳以上なら介護保険も利用できます。

パーキンソン病の重症度分類
  • 重症度Ⅰ 左右どちらかだけに振戦や筋強剛がある状態で、日常生活にはほとんど不自由ありません。
  • 重症度Ⅱ 左右両側に症状があり無動も加わってくるものの、姿勢反射障害はありません。仕事にはやや支障を生じますが、自立した生活を送れます。
  • 重症度Ⅲ 姿勢反射障害や歩行障害が加わり、生活のなかで部分的な介助が必要になります。仕事は職種や職場環境次第で続けることができます。
  • 重症度Ⅳ 一人で歩くことが難しくなり、生活のさまざまな場面で介助が必要です。
  • 重症度Ⅴ 一人では立つことができず、ベッドや車椅子での生活になります。全面的な介護が必要です。

治療について

飲み薬による治療

作用の異なる薬がいくつかあり、それぞれ症状のコントロールが期待できます。

レボドパ含有製剤 脳内のドーパミンが減ることがパーキンソン病の症状のおおもとですから、ドーパミンを脳に入れてあげれば症状は改善します。この薬は体内に吸収されたあと血流に乗って脳に入って、ドーパミンに変換されます。なお通常は、レボドパ含有製剤が脳へ入りやすいように工夫された、DCI(ドーパ脱炭酸酵素阻害薬)を混ぜた配合剤が使われます。

ドーパミン受容体刺激薬 受容体とは、神経伝達物質であるドーパミンを受け取る(受容する)部分のことです。この薬は受容体に直接結合し、刺激します。

酵素阻害薬 ドーパミンは、それを放出(伝達)する側と受容体の間を行き来するうちに、いくつかの酵素の働きで代謝(分解)され、徐々に量が減っていきます。減った分を補充できなくなる病気がパーキンソン病なのですが、酵素の働きを阻害(抑制)すれば、ドーパミンが減りにくくなります。そのように作用する薬を酵素阻害薬といいます。酵素阻害薬のうちMAO-B阻害薬は、ドーパミンを代謝する酵素の働きを脳内で抑えて、ドーパミンの量を保ちます。末梢COMT阻害薬は、併用するレボドパ含有製剤を代謝する酵素の働きを末梢で抑え、レボドパ含有製剤の効果を助けます。

レボドパ含有製剤やドーパミン受容体刺激薬、MAO-B阻害薬、末梢COMT阻害薬など、パーキンソン病の飲み薬がドーパミンにどう作用するかを示した図

ドーパミン遊離促進薬 ドーパミンを放出する部分の働きを強め、ドーパミンの量を増やします。

抗コリン薬 ドーパミンが減ることで相対的に作用が高まる神経伝達物質「アセチルコリン」の働きを抑える薬です。振戦の改善効果があると言われています。

ノルアドレナリン補充薬 神経伝達物質の一つ「ノルアドレナリン」を増やす薬で、すくみ足を改善します。

レボドパ代謝賦活薬 元はてんかんの薬で、ドーパミンの代謝・放出などを調節する作用があり、パーキンソン病にも使われます。

アデノシンA2A受容体拮抗薬 ドーパミンの作用とは別の経路で働き、レボドパ含有製剤の効いている時間が短縮してしまう、ウェアリング・オフ現象という症状を改善します。

患者さんの症状や年齢などを考慮し薬を選択

これらの薬のなかで、総合的に一番効果があるのはレボドパ含有製剤です。しかしレボドパ含有製剤は長期間服用していると次第に効果が弱く不安定になったり、不随意運動や幻覚、吐き気などの副作用が出やすくなります。このため、長い期間治療を続けることが予想される50代、60代で発病した患者さんには、最初はまずできるだけレボドパ含有製剤の使用量を抑えてほかの薬で補うという考え方が主流です。

一方、高齢の方にはレボドパ含有製剤がよく処方されます。また患者さんが、からだを動かす仕事を続けたいと希望される場合なども同様です。

おもな副作用と悪性症候群について

パーキンソン病の薬は副作用で吐き気を起こすことがよくあります。ただしこれは最初の1カ月ぐらいで慣れることが多いようです。便秘もよく起こる副作用です。パーキンソン病による自律神経症状の影響もあります。なお、吐き気も便秘も薬で比較的よくなります。そのほか、脳で作用する薬なので、幻覚や妄想などが現れることがあり、その場合は薬の量を加減します。

注意が必要なのは「悪性症候群」です。まれにしか起こりませんが、薬を急にやめたときや夏場の脱水時に起こります。発熱と痙攣がその症状です。このような症状が現れたら、すぐに救急車を呼んでください。なにより、薬の量を自己判断で変えないことが大切です。

リハビリテーション

家でもできるリハビリテーション(詳しくは医療スタッフのアドバイスを受けてください)
  • 背筋を伸ばす 壁に背中をつけて立つ→壁から少しだけ離れ、手と胸を壁につけて立つ
  • バランスをとる 片手を上げた状態や反対側の片足もあげた状態を保つ
  • その場足踏み 手足をなるべく大きく動かしながら足踏みをする
  • 顔の表情を作る ほおをすぼめたり、ふくらませたり、口や舌、目を動かす。大きな声を出す

リハビリテーションというと、からだが動かなくなった状態から始めるものと思われがちですが、パーキンソン病の場合ではむしろそうなるのを防ぐために行います。薬による治療と同じくらい大切な治療法です。姿勢反射障害がある場合は、介助を受けながら行ってください。

リハビリテーションの効果
  • 筋強剛などのために関節が固まって、本当に動かなくなってしまうのを防ぎます。
  • 歩行障害をカバーし、生活の活動範囲を広げます。
  • からだを動かさないため筋力がさらに低下するのを防ぎます。
  • 骨を丈夫にして骨折を防ぎます。
  • からだを動かすことで、ストレスが発散されます。
  • これらの結果、健康寿命(自立生活を送れる期間)を延長できます。

手術による治療

薬ではコントロールが難しくなってきたときに、脳の中に電極を埋め込み、電流を流して刺激を与えるという手術治療があります。この手術で症状がとてもよくなる患者さんもいます。その反面、手術の後遺症が出てしまったり、効果がないケースもあります。手術を受けるかどうかは医師とよく相談して決めてください。

病気とともに生きる ~日常生活の工夫と注意~

パーキンソン病がどのような病気か、おわかりいただけたでしょうか? この病気は中高齢者に多く、発病後は少しずつ不自由さが増えてきます。しかしそれを深刻に考えずに明るく生きるように努力しましょう。一日一日がよい日だったと思うようにしましょう。病気を十分理解したうえで、病気にとらわれ過ぎずに生活を送ることができれば、きっと充実した日々になると思います。最後にそのためのアドバイスをいくつかあげておきます。

よくある質問

この病気は遺伝しますか? 20〜30代の若い人に発病する若年性パーキンソン病という病気があり、これはまれに遺伝が関係していると考えられていますが、中高年になって発病するパーキンソン病は遺伝しません。

アルツハイマー病とはどう違うのでしょうか? これも多い質問です。どちらも病気を初めて報告した外国人医師の名前が病名になっていて、似ている病気と思われがちですが、両者は全く別の病気です。アルツハイマー病は認知障害(痴呆)が進むのに対し、パーキンソン病は運動系の障害が進む病気で、認知障害が主症状ではありません。

転ばないように注意しましょう 姿勢反射障害による転倒防止のため、屋内の床の段差をなくしたり、手摺りをつけたり、室内の整理整頓を。外出時に杖を持つと、周囲の人への注意喚起の意味でも役立ちます。

薬は必ず指示どおりに飲んでください 思わぬ副作用の予防のために、大事なことです。

水分を多めにとりましょう 脱水は便秘の原因になり、悪性症候群を引き起こすこともあります。夏場はとくに注意してください。

公的な社会サービスを利用しましょう 生活に不自由なことができたら、本人や家族だけで解決しようとせず、介護保険など利用できることはなんでも利用しましょう。

社会との接点をいろいろ作りましょう 病気だからと内にこもらず、どんどん人と会って話をしましょう。それが病気をもちながら生きていく活力を生みます。

全国パーキンソン病友の会

患者さん同士の情報交換や、治療の向上を図る全国的な組織として「全国パーキンソン病友の会」があります。イベントを通じ人との積極的な交流、機関紙による最新情報の入手ができます。

入会方法などのお問い合せは……全国パーキンソン病友の会 本部事務局
〒165-0025 東京都中野区沼袋4-31-12 矢野エメラルドマンション306号
TEL 03-6257-3994 FAX 03-6257-3995
ホームページ https://jpda-net.org

この記事は冊子「わかりやすい病気のはなし」シリーズ32『パーキンソン病』(2019年11月発行)をもとに作成しています。冒頭の Q&A は専門班による改訂原稿を反映しています。