腰痛
ほとんどの人は一生のうち、一度は腰痛を経験するといわれています。また、日本人の10人に1人が腰痛を訴えているという報告もあります。このように頻度の高い腰痛ですが、その原因はたくさん考えられます。時間がたてばよくなる腰痛もある一方で、見逃してはいけない病気が隠れていることもあります。
腰痛の主な原因
- 背骨の病気…椎間板ヘルニアや脊椎の骨折、腰部脊柱管狭窄症など
- 内臓の病気…腎臓や尿管の結石、子宮筋腫、がんなど
- 血管の病気…大動脈瘤など
- その他…精神的なストレスなど
次のような腰痛は注意が必要です。早めに整形外科を受診してください。
- 安静にしている時も痛む
- 動けないほどの腰痛がある
- 徐々に痛みがひどくなっていく
- 腰痛だけでなく、発熱、吐き気、めまいなど他の症状もある
腰の背骨(腰椎)の仕組み
脊柱管には脊髄から伸びる馬尾が入っています
背骨は、椎骨と呼ばれる骨と椎間板という特殊な軟骨が重なり合ってできています。椎骨の中には、周囲を骨に囲まれた隙間があって、その隙間が首からお尻のあたりまでずっとつながり、1本の長い管のような構造になっています。それが「脊柱管」です。
脊柱管の中には脳に直接つながっている中枢神経(脊髄)が収まっていて、それは腰の上あたりまで伸びています。腰から下の脊柱管には、脊髄につながっている「馬尾」という末梢神経の束が入っています。さらに馬尾は左右に向かってより細い「神経根」と呼ばれている神経になり、硬膜を貫いて枝分かれしていきます。
腰部脊柱管狭窄症
ときどき腰や足にしびれや痛みを感じる、とくに歩き始めると足にしびれや痛みが強くなって歩きにくくなる、あるいは背筋を伸ばして立っていると腰からふともも、ふくらはぎにしびれや痛みが強くなり立っていられなくなる、また前かがみの姿勢で休むと楽になるといった症状に心あたりはありませんか。
これらの症状は「腰部脊柱管狭窄症」によくみられる症状です。腰部脊柱管狭窄症はあまり聞き慣れない病名ですが、人口の高齢化とともに国内で急速に増え続けている、高齢者に多い病気の一つです。年をとると、ほとんどの人の背骨に、老化による変形がみられるようになります。これが腰部脊柱管狭窄症の大きな原因です。
脊柱管が狭窄すると…
脊柱管が狭窄すると中に収まっている馬尾や神経根、あるいはそれらの神経に血液を送り届けている血管が圧迫されます。そのような物理的な圧迫や血流障害によって神経の働きが障害され、さまざまな症状が起こります。
坐骨神経痛は、その代表的な症状の一つです。坐骨神経は腰椎の神経根が何本か集まって下半身に伸びているため、腰の部分で圧迫による障害を受けると下半身に症状が現れるのです。

間欠跛行が特徴
間欠跛行とは「しばらく歩くうちに、お尻から足にかけてしびれや痛み、ふくらはぎのはり、脱力などの症状が強くなり足が前に出なくなり、しばらく休むと症状がおさまり再び歩けるようになる」状態を指します。
また、しばらく立っているだけでふとももからふくらはぎにかけてしびれや痛みを感じる、なども腰部脊柱管狭窄症の症状です。その他、排尿障害、便秘、勃起障害といった、一見腰とは関係なさそうに思える症状も腰部脊柱管狭窄症で現れることがあります。
間欠跛行以外にも症状がでやすい姿勢があります。背骨をまっすぐにするか、または体をそらす姿勢をとると、症状が出やすくなります。例えば、電車内で立つ、洗濯物を干すのに背筋をのばす、あお向けで寝る、といった姿勢です。
治療の基本は保存療法
治療は薬物療法やブロック療法、理学療法などの保存療法と、脊柱管内の神経の圧迫を取り除く手術療法があります。まず保存療法を行ったうえで十分効果がみられない場合に手術を考えます。手術が必要なのに先延ばししていると、神経が傷んでしまい、手術をしても神経の働きが回復しにくくなります。特に尿失禁や便失禁のような症状のある場合はできるだけ早く医師の診察を受けることが大事です。
薬物療法
- 消炎鎮痛剤…痛みを抑えます。
- ビタミン剤…神経の働きを助けます。
- 循環改善剤…神経の血流を改善する働きをします。プロスタグランジンの注射剤や経口剤があります。
ブロック療法
圧迫を受けている神経の周りに局所麻酔剤とステロイド剤を注射します。
理学療法
赤外線や超音波などをあてて血流改善を期待する温熱療法、コルセットを装着して痛みを和らげる装具療法、その他、牽引療法、マッサージなどがあります。
手術療法
一般的に、神経の圧迫をとるために椎弓の一部を削る手術を行います。術後、数日でリハビリテーションを開始し、約2〜3週間くらいで退院できます。しかし、時として骨盤の骨を移植し金属で補強する脊椎固定術が必要な場合があります。手術の必要性や方法については担当の医師とよく相談したうえで個別に決めることとなります。
よい治療を受けるために先生に伝えておきたいこと
大事なことは、患者さんが希望する治療を医師にはっきり伝えることです。少々痛みやしびれがあっても手術は避けたいと思っていれば保存療法で経過をみる場合もありますし、ゴルフなどのスポーツをやりたいのであれば、手術を考える必要があるかもしれません。具体的に医師とよく相談していただくことが大事です。
日常生活の中での工夫と注意
この病気では少し前かがみの姿勢になると、神経への圧迫が緩和されるため症状が軽くなることが多いので、外出する時に杖を使うとか、手押し車タイプの買い物カゴなどを使うと自然に楽な前かがみの姿勢になり、長い距離を歩けます。同じ理由で自転車も自然と前かがみの姿勢になりますので、長い時間乗っていられます。
日常生活において腰に負担をかけない工夫をします。
腹筋を強化すると、腰椎への負担が軽減されます。ただし、体操をしている時に痛みやしびれなどの症状が強くなった場合はただちに中止してください。楽にできる体操を続けることが大切です。
アンケート
- 歩き出してしばらくすると腰や太ももからふくらはぎにかけてしびれたり、痛んだりして歩けなくなることがありますか。(この症状は間欠跛行といって、腰部脊柱管狭窄症に特徴的な症状の一つです) 頻度:いつも・ときどき・ない 程度:がまんできない・がまんできる・かるい
- 腰を伸ばして後ろにそらしたり、しばらく立っていると腰や太ももからふくらはぎにかけてしびれたり、痛みを感じますか。(腰部脊柱管狭窄症では背をそらしたときに症状が強くなる傾向があります) 頻度:いつも・ときどき・ない 程度:がまんできない・がまんできる・かるい
- 前かがみの姿勢をとると腰や太ももからふくらはぎにかけてのしびれや痛みが軽くなりますか。(椎間板ヘルニアではこのようにすると症状が強くなりやすいのですが、腰部脊柱管狭窄症では軽快することが多くあります) はい・いいえ
上のような症状に心あたりある方は医師に相談してください。
この記事は冊子「わかりやすい病気のはなし」シリーズ31『腰部脊柱管狭窄症』(2016年8月発行)をもとに作成しています。