骨は生きている

骨は石のように硬い物質に見えますが、実はほかの組織と同じような生きた細胞の集まりです。

古い骨が溶かされることを骨吸収、新しい骨が作られることを骨形成といい、これらの一連の過程を骨リモデリングと言います。

なにかの原因で骨リモデリングのバランスが崩れると、骨形成を上回るスピードで骨吸収が進み、骨の内部はすき間だらけになってしまいます。骨がこのような状態になる病気を、骨粗しょう症といいます。

国内の骨粗しょう症の患者さんは高齢化とともに急増していて、その数は1,000万人を上回ると推測されています。

年代別の骨粗しょう症発病率を示すグラフ。40代から80代にかけて男女とも発病率が上昇し、とくに女性で急増することを表している

治療の目的は骨折を防ぐこと

高齢者の骨折は寝たきりにつながりやすい

骨粗しょう症で骨折しやすい部分(脊椎、腕の付け根、手首、大腿骨近位部)を示す図

骨粗しょう症それ自体では、自覚症状はありませんが、症状がなくても骨は確実に弱くなっていて、骨折しやすい状態です。

骨粗しょう症によって起こりやすい骨折には、脊椎せきついの圧迫骨折(背骨を構成している脊椎が押し潰されて骨折した状態)、大腿だいたい骨近位部骨折(脚の付け根)や手首の骨折、腕の付け根の骨折があります。

なかでも大腿骨近位部の骨折が一番問題です。ここを骨折すると、その瞬間に歩けなくなってしまいます。

治療には手術が必要で、一旦歩けるようになってもその後に反対側の大腿骨近位部を骨折したり、そのまま寝たきりになることもあります。

大腿骨近位部を骨折する人は1年間で約10万人ですが、そのうち2割近くの人が1年以内に亡くなられるという統計もありますし、また寝たきりは防げたとしても、車椅子が必要になることも少なくありません。

正常な脊椎骨と比べると、骨粗しょう症の脊椎骨では、椎体と呼ばれる円柱形の部分が押し潰されています。

骨折により、内臓にも悪影響が

脊椎の圧迫骨折では、腰や背中が曲がったり身長が縮んだりします。これらは老化現象のひとつで大したことではないと考えがちですが、決してそうではありません。内臓にも影響し、呼吸機能の低下、逆流性食道炎(食後に横になると、胃の内容物が逆流し食道に炎症を起こす)、消化管運動の低下による便秘、腸閉塞などを起こし、快適な生活が損われます。

骨粗しょう症の検査と診断

骨の強さは「骨量」という尺度で測ります。測定にはX線や超音波を用います。測定部位は、脊椎(背骨)や手の指、踵かかとなどいろいろあって、それぞれ長所短所がありますが、いずれも安全で痛みもありません。骨粗しょう症が疑われる場合は、DXA法(二重エネルギーX線吸収測定法)という方法で、腰椎ようついまたは大腿骨近位部の骨量を測り診断を確定します。

骨粗しょう症の診断基準

骨塩量の平均値※1に対する割合判定
80パーセント以上正常
70〜80パーセント骨量減少※2
70パーセント未満骨粗しょう症

※1 若年成人(20〜44歳)の平均。
※2 この段階でも脊椎の圧迫骨折や手足の骨折があれば、骨粗しょう症と診断されます。

診断・治療効果の確認に役立つ「骨代謝マーカー」

血液や尿から骨リモデリングの状態を間接的に知ることも可能です。骨量測定値は半年から1年経過しないと変化しませんが、骨代謝マーカーの検査値は、短期間で変化するので、薬の効果を確かめるのに役立ちます。

どんな人が骨粗しょう症になりやすいのでしょう

「骨粗しょう症の根本は、骨形成と骨吸収のバランスが崩れ、骨吸収の側に傾くことにあります。すべての人は加齢による骨形成能力の低下に伴い、中年期以降は骨量が減少する傾向にあります。

また、加齢以外にも、以下のようなことが骨粗鬆症発症の原因となります。

  • カルシウムの摂取量が少ない…骨の成分の多くはカルシウムです。食べ物から吸収されるカルシウムが足りないと、血中カルシウム濃度を保つために、骨に蓄えられていたカルシウムが溶け出して骨量が減ります。
  • 運動不足…正常な骨代謝の維持には適度な骨の刺激が不可欠で、運動しないと骨量が減少します。
  • 女性ホルモンの減少…女性ホルモン(エストロゲン)には骨量を増やす働きがあります。閉経すると、女性ホルモンが少なくなり骨量が急速に減少する場合があります。このような状態を閉経後骨粗鬆症と呼びます。
  • 最大骨量が少ない…骨量は、ふつう20〜30歳代にピークに達しますが、その時点の骨量を最大骨量といいます。成長期のカルシウム不足などで最大骨量が少ない人は、加齢などによる骨量減少の影響が大きく現れます。
  • 骨粗しょう症を促す病気や薬…卵巣機能が低下している人、胃や卵巣を切除した人、寝たきりの人、ステロイド剤や抗痙攣けいれん薬を長期間服用した人、甲状腺こうじょうせん機能きのう亢進症こうしんしょうなどの病気のある人は、骨粗しょう症にかかりやすくなります。
  • 血縁者に骨粗しょう症の人がいる…大腿骨近位部骨折を起こした人の子どもは骨折の頻度が2倍高いという統計などから、骨粗しょう症の発病には、体質も関係していることがわかっています。
骨形成と骨吸収が同じ速さで進む健康な骨のしくみを示す図 骨吸収が骨形成を上回り骨量が減った、骨粗しょう症の状態を示す図

骨を丈夫にして骨折を防ぐ暮らしのアドバイス

食事で気をつけること

カルシウム、ビタミンDを十分に… まずはカルシウムを十分に摂ることが第一です。日本人のカルシウム摂取量は1日500mg台で、所要量の600mg(骨粗しょう症の予防には800mg)を満たしていません。高齢者はカルシウム摂取が少なくなりがちなので、とくに気を配ってください。ビタミンD製剤を服用していない限り、カルシウムはいくら摂っても大丈夫です。

なお、カルシウムは単独で食べてもほとんど吸収されません。腸でのカルシウム吸収には、ビタミンDの働きが必要です。ビタミンDには、カルシウムを骨に取り込む作用もあります。ビタミンDも不足しないよう、食事のメニューに注意しましょう。

カルシウムの多い食品

食品1回に食べる量(g)その目安量そのカルシウム量(mg)
乳製品(カルシウム吸収効率が大変よい)
牛乳2001本200
チーズ252切れ160
ヨーグルト1001個110
大豆製品(カルシウム吸収効率が比較的よい)
豆腐1501/2丁180
油揚げ251枚75
納豆50大1/2包45
魚類・海藻類(カルシウム吸収効率はふつう)
いわし丸干201尾280
干えび101/2カップ230
煮干し105尾220
ひじき101/5カップ140
ししゃも301尾130
しらす15大さじ380
わかめ(乾燥)51/4カップ48
野菜類(カルシウム吸収効率はあまりよくない)
小松菜801/4把232
炒りごま10大さじ1120
大根の菜501/2株105

ビタミンDの多い食品

食品1回に食べる量(g)その目安量そのビタミンDの量(IU)
さけ701切れ1,050
さば701切れ310
うなぎ401/2尾300
まぐろ(赤身)705切れ150
いわし701尾105
生しいたけ202枚20

塩分、アルコール、コーヒーは控え目に… これらは過度に摂らない限り、それほど心配はないのですが、過度になると骨量減少につながります。

また、インスタント食品はできるだけ控えてください。インスタント食品は一般にリンを多く含みますが、リンは骨吸収を促す副甲状腺ホルモンの分泌を促進したり、カルシウムの排泄を増やしたりして、骨量減少を招きます。

からだを動かして骨に刺激を与えましょう

適度な運動は骨形成を活発にします。とはいってもあまり無理をすると、逆に骨折の危険が高くなってしまいます。安全に継続することが一番大切ですから、その意味では“歩くこと”が最適です。汗ばむくらいの早さで、毎日最低20分歩くのがよいでしょう。

なお、カルシウムの吸収に必要なビタミンDは、皮膚に紫外線が当たることで、体内のデヒドロコレステロールという物質が変化して作られます。ですから外出の機会が少ない人は、なるべく屋外で運動したほうがよいでしょう。しかし、日焼けするほどの日光は皮膚の負担となるので、よくありません。

転ばぬ先の… 転倒防止対策チェックリスト

骨粗しょう症の治療と同時に、骨折の原因となる転倒の危険性を取り除くことも大切です。

転倒防止対策チェックリスト
  • 物につまずかないように、家の中を整理整頓
  • 床の段差をなくす
  • カーペットや電気製品のコードは固定する
  • 階段やトイレ、浴槽には手すりや滑り止めを
  • 照明は明るく、スイッチは部屋の入り口に
  • 立ち上がるときはゆっくりと(ふらつき防止)
  • サイズのあった靴を履く(サンダルはよくない)

骨粗しょう症の薬

現在、国内ではいろんなタイプの薬が使用できます。個々の患者さんの骨粗しょう症の原因や、骨折の有無、合併症の有無などを考慮して処方されます。

カルシウム製剤、ビタミンD製剤… これらは食事療法を補い、カルシウムのバランスを整え、骨の骨形成を助ける目的で処方されます。

エストロゲン製剤… エストロゲンは、骨破壊を抑え骨形成を促す女性ホルモンです。おもに閉経後の女性に処方され骨量を増やします。エストロゲンには、乳がんなどになりやすくなる副作用があるため使用しづらい面がありましたが、最近、この副作用の心配がない薬も使えるようになりました。

ビスフォスフォネート… おもに骨吸収を抑えて骨量を増やします。エストロゲン以上の効果があり、長期間にわたって骨量を増やし続け、実際に骨折の頻度を減らすことが統計的に確認されています。

この薬を処方された場合、必ず空腹時に服用し、服用後しばらくは横にならないようにしてください。薬の吸収率を高めたり、副作用を防ぐためです。

この薬は毎日飲むタイプのほかに、1週間に1回だけ飲めば良いタイプなどもあります。実際には多くの患者さんが、後者のタイプ(1週間に1回服用するタイプ)で治療されています。

このほか、カルシトニンという、副甲状腺機能を整え骨代謝を改善するホルモン製剤、そのカルシトニンやエストロゲンの分泌を促すイプリフラボンなどがあります。

なお、医院にかかる場合には、服用している薬の名前を必ず医師に伝えてください。

この記事は冊子「わかりやすい病気のはなし」シリーズ2『骨粗しょう症』(2008年6月発行)をもとに作成しています。