病気を正しく知ることが一番のポイント

気管支ぜん息の定義、原因、発作の誘因・症状

気管支ぜん息は発作性に気道が収縮するために咳や息を吐く時のゼーゼーという呼吸音(喘鳴)と呼吸困難を繰り返す病気です。喉のどから肺の奥へ伸びている空気の通路のことを気道きどうといいます。この気道が収縮して狭くなってぜん息が起こります。

気管・気管支・肺の位置と、健康な人とぜん息の人の気管支断面を比べた図。ぜん息の人は症状がない状態でも気管支の壁が厚くなり、痰が詰まって空気の通り道が狭くなっている

発作は、夜から早朝にかけてよく起こります。診察室で医師に診てもらっているときはあまり起こりません。ですから、患者さん自身の判断による正しい対処がとても大切です。間違った知識や思い込みによる自分勝手な治療は、病気を悪化させたり、ぜん息死を招きかねません。

我が国では国民の約8%、およそ1000万人がぜん息に罹患しており、その内の5-10%が難治性(重症)のぜん息です。ぜん息で亡くなる人は年々少なくなっていますが、それでもまだ年間1000人程度がぜん息で亡くなっています。

症状と検査の異常

夜間や早朝の咳や発作時の息苦しさ、とくに息を吐くときの苦しさと、ゼーゼーという呼吸音(ぜん鳴)が特徴です。ひどい発作のときは、苦しくてしゃべられなくなり、横になれなかったり、治療しなければ息が詰まってまれに呼吸停止に至り亡くなることもあります。発作時以外には、ほとんど症状はありません。

どんなとき発作が起きるか

アレルギー反応で起きるほか、ウイルスなど呼吸器の感染症にかかったときや、季節の変わり目や、天候の変化、気温や気圧の変化、喫煙、線香などが発作の誘因になります。不安やうつ病など心理的なことが影響することもあります。1日のうちでは、夜から早朝にかけてが発作の起きやすい時間帯です。なお、運動や特定の薬(アスピリン系の解熱鎮痛薬やある種の降圧薬など)の服用によって発作が起きる人もいます。

原因

発病の原因として多いのは花粉やペットやかびなどのアレルギーです。しかし、アレルギー以外の原因もいろいろあり、一つには絞りきれません。運動や前述の薬剤や、寒冷や喫煙など、いくつもの要素が重なりあって発病すると考えられています。

ぜん息の検査

ぜん息は発作の自覚症状などから、比較的容易に診断できますが、慢性閉塞性肺疾患(COPD)などのぜん息に似た症状が現れる病気もあるので、それらが疑われる場合は、血液検査やレントゲン検査、呼吸機能検査などが行われます。

後で述べますが、気管支喘息の大部分は気道の好酸球の浸潤によるアレルギー反応で起こりますので、血液検査として、アレルギー体質を表す免疫グロブリンE(IgE)、そしてしばしば、炎症の程度を示す好酸球の数と呼気の気道の炎症の度合いを表す一酸化窒素(FeNO)が測定されます。

喘息発症の原因を知ることはアレルギー治療の第一歩ですからぜん息と診断されたあとに、アレルゲン検査(特異的IgE)という発作の原因を特定するための検査を行うこともあります。しかし、ぜん息のアレルゲン(アレルギー反応の原因となるもの)は何百種類もあることがわかり、検査でそれをすべて見つけられるケースはそれほど多くはないため、多くの場合、スギ、ヒノキ、ペット、家ダニ、ハウスダストなど発病原因の頻度の高いものに限定されています。

喘息のもとにあるのは気道の慢性的な炎症

ぜん息は以前、気道の内壁が健康な人よりも敏感になっていて、わずかな刺激にも反応して気道収縮を起こす病気だと考えられていました。このため、発作が起きたときに気管支を広げる気管支拡張薬などで気道収縮を抑えることが、主な治療法でした。

しかし、ぜん息の人の気道には、つねに好酸球を中心とした慢性の炎症が起きていることがわかりました。この炎症が気道を敏感にし、気道を狭めていて、ちょっとした環境の変化や刺激が加わったときに発作が起きることが分かりました。好酸球の作用は副腎皮質ホルモン(いわゆるステロイド)によって消失しますから、近年吸入ステロイド薬が抗炎症薬として喘息治療の中心となりました。事実吸入ステロイドが使われるようになって喘息死が劇的に減少しました。

発作が病気を進行させる

ぜん息の発作は気管支が拡張すれば治まります。しかし、気道の炎症は治っていません。それどころか、発作のたびに気道壁は傷つきます。気道の細胞はその傷を修復しようと試みますが、修復の途中で次の発作が起きると、中途半端で不完全な修復が繰り返されます。結果的に炎症はさらに進行して、気道が狭くなります。つまり、発作を起こすこと自体が、ぜん息を悪化させてしまうということです。

ぜん息発作から気管支拡張薬による治療、抗炎症薬と気管支拡張薬による治療へと気管支の断面が変化していくようすを示した図

病気の自己管理と発作時の対応

では、気道の炎症を抑えるにはどうすればよいのでしょう。また、どんなに正しい治療をしていても、発作を完璧に防ぐことが難しいこともあります。発作には、どのように対処すればよいのでしょう。

初めに現在使用されている主なぜん息の治療薬を挙げておきます。

喘息の治療薬

近年、医学会ではぜん息の発作のことを増悪と表現することが一般的になりました。喘息は治療薬にとても反応し易い疾患です。それだけに正しい使い方が望まれます。ぜん息薬は増悪を予防する薬(長期管理薬=予防薬)と増悪時に治す薬(増悪治療薬)に大別されます。日頃は予防薬を使い、それでも増悪を起こした場合に増悪治療薬を使います。

1. 長期管理薬

ぜん息が悪化しないように予防する薬。吸入薬が主体ですが経口薬や貼り薬もあります。

1) 吸入ステロイド
ぜん息治療の主役で、ぜん息の原因である気道の炎症を防ぎます。ステロイドと聞くと不安になる人がいますが、吸入薬はほとんど体内に吸収されず、吸収されても大部分が肝臓で処理されるので安全です。しかしとても大量であればステロイドの副作用も懸念されます(全身性ステロイドの項参照)。エアーとパウダーがありますのでそれぞれの吸入の仕方を習得して下さい。

2) ロイコトリエン受容体拮抗薬
気道の炎症を抑える非ステロイド系の飲み薬です。吸入ステロイド薬が使用出来ない小児にはしばしば用いられます。

3) テオフィリン製剤
キサンチン誘導体とも呼ばれます。基本構造がコーヒーに似ています。事実コーヒーを喘息治療に用いた時代もありました。喫煙者などで通常の抗ぜん息薬が効き難い喘息に使われることがあります。投与量によって色々な副作用が出るので医師の指導管理が特に大切です。注射薬は喘息増悪の治療に使うこともあります。

4) 経口(注射)ステロイド
吸入ステロイドなどの抗ぜん息薬が無効な重症のぜん息や増悪時に使用されることがありますが、長期に使えば消化管出血、肥満、骨粗鬆症、白内障などの全身性の副作用が出るため、最近は出来るだけ短期間の使用が勧められています。

5) 抗コリン薬(ムスカリン受容体拮抗薬)
気管支の収縮を抑える吸入薬です。単独では主にCOPDに使用されますが、ぜん息ではこれらのくすりとの配合薬として使用されます。前立腺肥大や緑内障を合併している場合は注意が必要です。特に閉塞隅角緑内障には使用できません。

6) 吸入ステロイドと長時間作用型β2刺激薬の2剤配合薬
現在予防薬と長時間作用する気管支拡張薬との配合薬が軽症喘息でも治療の最初から選択される傾向にあります。

7) 吸入ステロイドと長時間作用型β2刺激薬と抗コリン薬の3剤配合薬
抗コリン薬には咳や痰を抑える効果があり、また好酸球による炎症と関係のない女性の肥満喘息にも効果があり、さらに、吸入ステロイドやβ刺激薬の効果を高める作用があるため重症のぜん息に上記の2種類に加えた3剤配合薬として使用されます。また、この3者の配合薬は吸入ステロイドとβ2刺激薬との2剤配合薬よりも、重症のぜん息が悪化する比率が少ないとされています。

8) 生物学的製剤(分子標的薬)
細胞から出てぜん息を引き起こす蛋白分子そのものを直接抑える薬です。経口ステロイドでも改善しない難治性ぜん息に有効です。また、ステロイドを使用しなくてよくなることも利点です。2023年現在5種類の製剤が発売されています。値段の高いことが難点です。

2. 気管支を拡張させて増悪を治療する薬(増悪治療薬)

1) β2刺激薬:吸入・貼付・経口
収縮した気管支を拡張させて増悪を改善します。β2刺激薬の吸入薬が増悪治療薬の代表です。β2刺激薬には吸入後すぐ効果が現れるが、作用が1時間以内の短時間作用型と24時間程度作用が持続する長時間作用型があります。増悪治療薬としては短時間作用型β2刺激薬が使用されます。そして長時間作用型β刺激薬は吸入ステロイドや抗コリン薬との配合薬として重症喘息の長期管理薬や増悪の予防薬として使用されます。

2) 全身性ステロイド(副腎皮質ホルモン) 経口・注射
ぜん息が増悪した時に使います。副作用を考慮して十分量を出来るだけ短期間使用します。

ここから、ぜん息治療のポイントを5つにまとめて紹介します。

ポイント1 気道の炎症を抑えて発作を防ぐ~喘息薬を継続する

まずは薬を指示されたとおりにきちんと使うことです。このことをアドヒアランスといいます。発作が起きたときにだけ薬で対応していたのでは、病気の進行は抑えられません。発作が起きないときでも、医師に薬の減量・休薬を指示されるまではきちんと使用してください。炎症を抑える薬の代表的なものには、吸入ステロイド薬や、抗ロイコトリエン薬などがあります。吸入ステロイド薬にはエアーとパウダーの製品があり、その扱い方に少しコツが必要ですから、正しい吸入方法を覚えてください。また、吸入時に口の中に薬が付着するので、使用後は必ずうがいをしてください。

ぜん息治療の中心はあくまで吸入薬ですが、炎症の原因自体を抑える目的で、抗ロイコトリエン薬などが処方されます。吸入薬は吸入の仕方をマスターすべきですが、経口薬(のみ薬)は扱い方のコツなどはありません。しかし指示どおりの薬は長期間使うことになりますから、処方された薬がなぜ必要なのか、どのように作用するのか、患者さん自身がよく理解するようにしましょう。

ポイント2 吸入薬を正しく使用する

ぜん息治療の中心は吸入薬ですから、それを正しく使用することがとても大切です。そのポイントは以下の通りです。

  1. まず背筋をのばして十分に息を吐く
  2. パウダーは空気漏れがないように吸入口をしっかりとくわえる
    エアーは口で軽くくわえて隙間を作って吸入する
  3. 吸入の前の少量の飲水と、十分な呼気を行う(飲水によって喉枯れが防げます。また、息を十分に吐くことによって吸入した薬剤が肺の奥までとどきます)
    息を吐いてから、「ホー」と思いながら深く、ゆっくりと吸入する(ホー、という口の形によって喉の奥が広がり、エアーが入り易くなります)
  4. 器具をはずし、5秒ほど息止めをする
  5. 鼻からゆっくりと吐く
  6. 十分にうがいをする。うがいは口腔内や咽頭を洗い流すよう3回ずつ行い、吸入後の少量の飲水も勧める

ポイント3 発作(増悪)時は早めに正しく処置

発作時には気管支拡張薬(おもにβ2刺激薬)を吸入します。β2刺激薬は速効性があり大変有効ですが、症状がひどくなってからでは、効果は弱くなります。発作のなるべく早い時期に正しく吸入してください。がまんは禁物です。軽い発作だと思っていたのが、急にひどくなって呼吸困難に至ることも、決してまれではありません。ぜん息歴が長い人ほど発作を甘くみる傾向がありますので、とくに注意してください。

“いつもと違う”と感じたら

次のようなことがあてはまるときは、まず担当医に連絡して指示を仰いでください。連絡が取れなかったときには、経口ステロイド薬を服用し、すぐに救急病院を受診するか、救急車を呼んでください。もうすぐ朝だから少し待って病院に行こうなどとは考えないことです。また、普段から経口ステロイド薬を服用している人や、過去に意識を失うほどの大発作を経験したことのある人はさらに早めの対応を心掛けてください。

  • 会話や歩行が困難なほどの発作
  • 吸入β2刺激薬がいつものように効かない
  • 頻繁にβ2刺激薬の吸入が必要になる(あまり頻繁・多量の吸入は危険です)
  • 次第に症状が悪化していく
  • ピークフロー(後述)の値が自己ベストの50%以下になった

ポイント4 日常生活の工夫

発作にアレルギーが関係している場合は、環境を見直して、アレルゲンをできるだけ避けることです。それにより、発作の誘発や、アレルギーによる気道の炎症を抑えることができます。アレルゲンは、ダニ、花粉などの、呼吸により気管支に入り込むもの以外に、牛乳や卵、そばなどの食べ物の場合もあります。

そのほか、次のようなちょっとした工夫で発作の誘因を少なくすることもできます。

発作の誘因を減らす工夫
  • 掃除の際に…ふとんやカーテン、カーペット、ぬいぐるみは掃除機で十分にホコリを吸い取る。エアコンのフィルターもこまめに清掃。
  • 天気のよい日はふとんを干し、その後に掃除機で清掃。
  • 禁煙…患者さん本人はもちろん、受動喫煙を防ぐため、ご家族全員に禁煙がすすめられます。
  • アルコールはほどほどに。
  • 気温の変化をやわらげる…冬季の暖房器具は、こたつなどのからだの一部を温めるものより、部屋全体を温めるエアコンを。マスクの着用も有効。
  • できればペットは飼わない。飼うのであれば余計吸入治療の継続が必要です。なおペットのシャンプーを習慣にしてください。
使ってはならないくすり(使用禁忌薬)を知っておく

高血圧の薬のうちのβ遮断薬、あるいは麻薬、そして副鼻腔や鼻ポリープのある人は非ステロイド系の解熱鎮痛薬を使用しないほうが無難です。但し、非ステロイド系解熱鎮痛薬の中でも塩基性(非酸性)のソランタール®やアセトアミノフェン(カロナール®)、あるいはCOX2阻害薬のセレコックス®などは比較的安全です。

ポイント5 気道の状態を自分で把握して管理する

気道の状態を患者さん自身で確かめる方法として、ピークフロー(最大呼気流量)を測る方法があります。これは、息をいっぱいに吸い込み、思い切り吐き出すときの空気のスピードのことです。ピークフローが低下していれば、気道が収縮しているということで、自覚症状がなくても、発作を起こしやすくなっていると判断できます。市販のピークフローメーターで、ごく簡単に測定できます。起床後に1回、夕方から就寝までの間に1回の計2回測定し、自己管理の指標として役立ててください。

ピークフロー値による自己管理のめやす
  • グリーンゾーン=自己最良値の80〜100%。ぜん息はよくコントロールされています。
  • イエローゾーン=自己最良値の50〜80%。夜間や運動時などに発作が起きやすい状態です。あらかじめ医師に指示されているとおりに対処してください。
  • レッドゾーン=自己最良値の50%未満。安静にしていてもぜん息の症状が現れます。すぐにβ2刺激薬を吸入し、医師の診察を受けてください。

小児喘息について

子どものぜん息は、大人の場合と異なる点がいくつかあります。まず、発作の原因がアレルギー性のものが多い点です。なにがアレルゲンか、どんなときに発作が起きやすいのか比較的はっきりわかりますから、それを取り除く努力をできるだけ徹底してください。乳幼児時期に発症したぜん息は思春期に向けて自然に改善する傾向が指摘されています。一方、学童期には運動時のぜん息発作がしばしば見られます。これを運動性ぜん息といいます。

ぜん息は患者さん自身の自己管理が大切な病気ですが、小児ぜん息の場合は、まず保護者が病気を理解することがポイントになります。お子さんのぜん息発作を予防する維持療法や発作が起きた場合にそれがどの程度の発作で、どう対処すべきなのか、主治医と日頃から連携して、早めに判断できるようになってください。

また、この病気は発作がないときは、全く健康的に生活できる病気だという理解も大切です。例えば運動性ぜん息では、運動前に気管支拡張薬を使うことなどで安全に行えます。なるべくほかの子どもと分け隔てなく、ふつうの学校生活をさせてあげてください。

この記事は冊子「わかりやすい病気のはなし」シリーズ5『気管支ぜん息』(2016年5月発行)をもとに、専門班による改訂原稿を反映して作成しています。