糖尿病予備群とは、どんな状態?

糖尿病の一歩手前の状態が、糖尿病予備群です。血液中の糖分(ブドウ糖)の濃度「血糖値」が高いのが糖尿病ですが、ふつうの人よりも血糖値が少し高いものの、まだ本当の糖尿病の域には達していない、いわば、糖尿病のなりかけ状態です。

こんな人は、糖尿病予備群かも…

糖尿病予備群を見つけ出すには、いくつかの方法があります。

予備群には、以下の条件にあてはまる人がなりやすいのです
  • 血縁者に糖尿病の人がいる
  • 検診で血糖値が高めとか、尿糖が出ているといわれたことがある
  • 食べすぎや飲みすぎの習慣がある人
  • 太っている人
  • 若いのに歯周病がひどい人
  • おできなどができて治りの悪い人
  • 巨大児の出産や、流産、死産を繰り返した女性

実際に医師が診断する場合には、次の手段で糖尿病予備群と判定します

糖尿病は一般に、症状とブドウ糖負荷試験で診断されます。ブドウ糖負荷試験では、正常型、境界型、糖尿病型の三種類のどれかに判定されますが、境界型と判定された人が、糖尿病予備群です。

75g ブドウ糖負荷試験による血糖値の判定

判定区分糖液を飲む前飲んで2時間後
正常型110mg/dL 未満そして140mg/dL 未満
境界型正常型でも糖尿病型でもないもの
糖尿病型126mg/dL 以上または200mg/dL 以上

糖尿病予備群では、かぜやストレスがあるときにだけ尿糖が出ることもありますが、血糖値は空腹時ならほぼ正常ですし、食後でもわずかに高くなる程度です。

HbA1c※が5.6〜6.0%の場合。

※HbA1c:ヘモグロビンエーワンシー。過去1〜2カ月の血糖値の平均を示し、糖尿病の診断、コントロールの指標となる検査です。基準値は、4.3〜5.8%です。

メタボリックシンドローム(複合生活習慣病)にあてはまる場合:最近、テレビや雑誌でよく取り上げられる「メタボリックシンドローム」。肥満(ウエストサイズが男性は85cm以上、女性は90cm以上)に加えて、血圧、血糖値、血清脂質(中性脂肪など)の異常値が二つ以上ある場合のことです。この状態ではまだ糖尿病ではないとしても、糖尿病の人に多い動脈硬化が進行しやすくなります(後述)。

動脈硬化とメタボリックシンドローム
軽い脂質異常症(高脂血症)、軽度の血圧上昇、糖尿病予備群という軽い異常が重なり合って、動脈硬化を起こすようすを示した図

動脈硬化とは… 動脈の壁が硬くなったり、血液が流れる部分が狭くなる結果、心臓や脳などの臓器を養う血液が不足して、狭心症や心筋梗塞、脳梗塞をはじめ、足の壊疽えそなどが起きます。

メタボリックシンドローム(複合生活習慣病)とは… 内臓周囲に過剰に溜まった脂肪(内臓脂肪)から、血管を傷つける物質などが放出され、脂肪や糖の代謝に異常が起きている状態です。動脈硬化が急に進んで心筋梗塞や脳梗塞の危険が高くなります。以下の診断基準に該当する場合は、運動や食事の習慣を改善し、動脈硬化を予防する治療が必要です。

メタボリックシンドロームの診断基準
  1. ウエストサイズが男性85cm以上、女性90cm以上
  2. 次の3項目のうち2項目以上が該当する
    • ア.中性脂肪(トリグリセライド)が150mg/dL以上か HDL-コレステロール40mg/dL未満
    • イ.収縮期血圧130mmHg以上か拡張期血圧85mmHg以上
    • ウ.空腹時血糖値110mg/dL以上

「まだ予備群だから…」、その油断が禁物

予備群の段階なら自覚症状は全くありませんし、後述するような、割合と簡単な努力でふつうの人の状態に戻ることも可能です。しかし、油断したり甘く考えて、それまでの生活パターンを続けていると、血糖が次第に高くなって、いつの間にか本物の糖尿病になってしまうのです。

また、血糖値が高めで血圧や血中コレステロールが高い場合、動脈硬化がより進行しやすくなります。このため、糖尿病でなくて予備群の段階でも、脳卒中や心臓病を起こすことがあり、最近増えているケースとして、医学的に注目されています。(前述)

予備群だとなぜ困るのか

自分はまだ予備群だからと油断してはいけません。

  1. 予備群の人は、数年以内に糖尿病になりやすいという傾向が認められています。
  2. 糖尿病の合併症の一つである動脈硬化は、予備群の段階から進行します。

本物の糖尿病になると大変!

ひとたび糖尿病になってしまうと、大変な事態が待ち受けています。

1. からだが消耗していく

血糖が高くなると、体内の栄養やエネルギーが無駄に浪費されて、からだがやつれてきます。そして、尿糖が出る、のどや口が渇く、尿が頻繁に出る、体重が減る、だるくて疲れやすくなる、勃起しにくくなる、足などにしびれや痛みが生じる、視力が衰える…などの症状が現れます。

2. 深刻な合併症が起こってしまう

糖尿病が大変な病気だと恐れられているのは、「合併症」を起こすからなのです。合併症は、一度現れると、進行の勢いを止めるのはなかなか難しいのです。

網膜症…眼の奥の網膜に眼底出血を起こしたり硝子体しょうしたい出血を引き起こし、視力が低下します。現在、国内で毎年3,000人以上が糖尿病網膜症で光を失っていて、成人の失明の主要な原因です。

腎症…血液中の老廃物を排泄する腎臓の機能が徐々に低下していき、やがて尿毒症を起こし、人工透析を受けないと命にかかわるようになります。現在国内で毎年1万数千人が糖尿病腎症で人工透析を開始していて、ほかの原因を押しのけて第1位を占めるようになりました。

神経障害…手足のしびれや痛みをはじめとする、ありとあらゆる神経系の症状や障害が起きて、毎日が苦痛で悩まされます。胃腸の障害、立ちくらみ、勃起障害のほか、心筋梗塞が起きても痛みを感じないなど、多彩な障害が起こります。

動脈硬化…前述の説明をご覧ください。

3. いろいろな生活上の制約が加わってしまう

糖尿病になってしまうと、予備群の状態では想像もつかないほどの制約が起こります。

  • 糖尿病の治療のために、食事療法や運動療法を毎日必ず、正確に実行する必要性が生じます。
  • 医師が指示する間隔で、定期的な通院が必要になります。
  • 多くの場合、血糖を下げるために薬を服用したり、インスリンの自己注射を行う必要が生じます。そのほか、合併症に対する治療も必要になります。

これらのため、時間的、経済的な負担がとても増えてしまうのです。いいかえれば、予備群の状態にとどめておかないで糖尿病の状態にしてしまうことは、「大きな損をする」ことになるのです。

予備群の人が守るべきこと

それでは、糖尿病の予防法を伝授しましょう。糖尿病を予防する生活は、ほかの生活習慣病の予防・改善、動脈硬化の防止にもなります。

1. 食事のとり方を見直しましょう

血糖値を上げないためには、食べすぎないことが基本ですが、同じ量を食べても血糖値が上がりやすい食べ方と、上がりにくい食べ方があります。

ゆっくり食べる…早食いをすると、食べた物が早く腸に到達するので、血糖値が急上昇します。また、早食いでは食べすぎになりがちです。

朝食を欠かさず、1日3食…食べる回数が少ないと、1回に食べる量が多くなり、食後の血糖値がより高くなります。

いろいろな素材をとり混ぜて食べる…品数が少なく栄養バランスが偏かたよった料理は、短時間で消化吸収されるため、血糖値が上がりやすくなります。逆に、いろいろなものを少しずつとりそろえて食べると、消化吸収に時間がかかり、血糖値は上がりにくくなります。

血糖値の上昇を抑えるものをメニューに入れる…野菜やきのこ・海藻、精製度の低い穀物などは、食物せんいが豊富で、血糖値の急な上昇を抑えてくれます。また、血糖値を上げにくくする特定保健用食品を利用してもよいでしょう。

どんぶり物だけの食事では血糖値が急な坂のように上がり、バランスの良い定食では上がり方がゆるやかになることを矢印で示した図

糖尿病患者さん対象の食品やサービスを利用する…糖尿病の患者さん向けに、食事療法をサポートする低カロリーのレトルト食品や宅配食サービスなどがあります。これらは予備群の人が糖尿病に進行するのを防ぐためにも役立ちます。

寝る前には食べない…寝る前に食べるとエネルギーが消費されず、貯蓄に回って太ります。食事はからだを動かす前に食べるのが原則。なるべく就寝3時間前までに夕食を。

血糖値を上げない食事 お役立ち情報

「糖尿病食」というと、もう糖尿病になってしまった患者さんが治療のために仕方なく食べる「病人食」だと思っている人がいますが、それは大間違い。糖尿病の食事療法の基本は、その人にあったカロリーを過不足なくとり、同時にそのカロリーの中で栄養バランスを整えるというものですから、糖尿病でない健康な人にもお薦めしたい「健康食」なのです。

最近はこのような情報が広く知られるようになり、糖尿病患者さん向けに調理された食品を買い求める一般の方も増えています。また、数多くの献立から毎日日替わりで配達されてくる宅配食は、自分にあったカロリーの食事を選べるので大変便利です。

とくに電子レンジで温めるだけの冷蔵タイプの宅配食は、手軽さが受けて人気です。食事とともに栄養成分の表示が配付されるサービスもあり、そういった宅配食を利用すれば、食事療法を勉強するのにも役立ちます。

腹八分目…満腹感を得ようとしない。

高カロリーの油物などは少なめに

間食、食後のデザート、果物、アルコールなどの食べすぎ飲みすぎに注意

2. からだを動かす習慣をつけましょう

日ごろの運動量が少ないと、体内でブドウ糖が処理されにくくなり、血糖値が上がりやすくなります。積極的にからだを動かすようにしましょう。なにも本格的なスポーツでなくても、生活の中でからだを動かすチャンスを見つければよいのです。

一番よいのは「歩くこと」です。手軽にできて、そのうえ糖尿病予防に効果的な運動です。通勤の際に電車やバスを一つ手前の駅・停留所で降りたり、買い物で少し遠回りしてみたりと、ちょっと工夫をして歩く機会を見つけてください。1日30分ぐらいの早歩きを3週間も続ければ、歩くのが楽しくなるはずです。

3. 肥満や太り気味の解消と予防

糖尿病の人の8割は現在肥満か、過去に肥満の時期があった人だといわれています。そして肥満は糖尿病だけでなく、あらゆる生活習慣病を起こしやすくします。それらの病気の予防には、太らないことや、肥満の解消がなによりです。

4. 上手な気分転換でストレス解消!

精神的なストレスも、血糖値を上げる重要な要因です。といっても現代社会には避けようのないストレスが多いので、上手に気分転換する術すべを身につけましょう。趣味やレジャーのほか、ボランティア活動などもよい方法です。

予備群の人は、定期検診を続けること

糖尿病予備群の人は、とくに自覚症状がないので、そのままの状態でとどまっているのか糖尿病になってしまっているのかは、自分では全くわかりません。ですから、なるべく一定の医療機関(かかりつけ医)を決めて、少なくとも半年に1回は検診を受けることが必要です。

この記事は冊子「わかりやすい病気のはなし」シリーズ14『糖尿病予備群』(2010年5月発行)をもとに作成しています。