メタボリックシンドロームって、なに?

メタボリックシンドローム(略して「メタボ」とも呼ばれます)は、おなかに脂肪(内臓脂肪)が必要以上に溜たまったことから、いくつかの生活習慣病やその予備群が重なって現れ、動脈硬化が進みやすくなっている状態です。心筋梗塞や脳梗塞を防ぐために、内臓脂肪を減らすことが重要です。

メタボの原因である内臓脂肪がなぜ溜るのかといえば、その理由は簡単で、摂取するカロリーが消費するカロリーよりも多いからです。ですから、摂取カロリーを少なくすることが、メタボの治療戦略の大原則。そこでこの小冊子では、摂取カロリーを上手に減らす方法、題して「メタボ退治作戦」を解説します。

メタボリックシンドロームの診断基準
  1. 腹囲(おへその高さ)が男性85cm以上、女性90cm以上
  2. 次の3項目のうち2項目以上が該当する
    • ア.中性脂肪(トリグリセライド)が150mg/dL以上か、HDL-コレステロール40mg/dL未満
    • イ.収縮期血圧130mmHg以上か拡張期血圧85mmHg以上
    • ウ.空腹時血糖値110mg/dL以上

1と2の両方に当てはまる場合が、メタボリックシンドロームです。

食事の面からの、メタボ退治大作戦!

作戦の概要 ~少ない努力で大きな成果を上げる~

摂取カロリーを減らすには食べる量を減らせばよいのですが、ただやみくもにトライしても、簡単にはいきません。そうたやすくメタボを退治できるくらいなら、初めからメタボにならないでしょう。実行可能な作戦計画を立てることが肝心です。

よい作戦の極意は、より少ない努力でより多くの成果を上げること。メタボ退治作戦における「成果」とは、第一に内臓脂肪を減らすこと、第二に必要な栄養素をしっかりとることです。一見、相反するようにも思えますが、要するに「バランスよく摂取カロリーを減らす」ということです。それには「なにをどれくらい食べるとよいかを知る」必要があります。

前哨戦ぜんしょうせん ~まずは小手調べ~

まず、基本的な確認事項です。次に挙げることは、「何度も見聞きしてうんざり」という人もいるかもしれませんが、それだけ大切だということです。

寝る前に食べない 睡眠中はエネルギーが消費されずに貯蓄に回り、太りやすくなります。

腹七分目 一般には「腹八分目」といわれますが、それはメタボでない人の話。メタボ退治には七分目で少しがまんしないといけません。

よく噛んで食べる 食事を食べ始めてから脳が「おなかが満たされた」と感じるのには少し時間がかかります。早食いし「ようやく満足した」と思うころには、実はもう食べすぎてしまっています。

朝食を抜かない 1日の摂取カロリーの合計が同じでも、朝食抜きの2食だと3食きちんと食べるよりも太りやすくなります。前日の夕方から昼食まで続く十数時間の絶食に対応して、からだがエネルギーを蓄積しやすい体質になるからです。

ジュース・アルコール・菓子に注意 これらは糖分が多く含まれています。「食べないのに太る」という人は、これらが原因かもしれません。

いざ、作戦始動! ~覚えておきたいポイント~

それではメタボ退治作戦の本番です。最初に作戦のポイントを押さえておきましょう。

ポイント1 コマが倒れないようにバランスをとろう!

「なにをどれくらい食べるとよいかを知る」方法の1つとして、最近、『食事バランスガイド』を用いる方法が広がってきました。これは、栄養教室などに参加し改まった学習をしなくてもバランスのよい食生活を送れるようにと、厚生労働省と農林水産省が作成したものです。

次の図のように、1日に口にする物を組み合わせて1つの独楽(コマ)をかたち作ります。コマがまっすぐに立ち、うまく回転することを意識しながら食べ物を選ぶと、自然にバランスのよい食生活になります。反対に、ごはんやおかずなどを食べすぎ、栄養が偏かたよると、コマはバランスを失い倒れてしまいます。

独楽(コマ)の形をした食事バランスガイドの図。上から主食5〜7つ、副菜5〜6つ、主菜3〜5つ、牛乳・乳製品2つ、果物2つの各層が重なり、コマの軸が水・お茶、コマを回す力が運動、コマを回すヒモが菓子・嗜好飲料として描かれている
食事バランスガイド(厚生労働省・農林水産省決定)

コマを組み立てるときは、食べ物を「1つ、2つ」と、「つ」(SV※)という単位で数えます。コマ全体の「つ」の総数が、1日の摂取カロリーに相当します。自分にあった「つ」の総数を知って、それを超えないようにしていれば、栄養バランスを保ったまま摂取カロリーをコントロールでき、内臓脂肪減少に役立ちます。

このあと、もう少し具体的に解説します。

※SV:Serving(サービング)の略。
※『食事バランスガイド』の詳しい情報は、厚生労働省や農林水産省、内閣府のホームページをご覧ください。

1日分の料理例の図。主食は1つ分がごはん小盛り1杯・おにぎり1個・食パン1枚・ロールパン2個、副菜は1つ分が野菜サラダや味噌汁、主菜は1つ分が冷奴や納豆、牛乳・乳製品は1つ分が牛乳コップ半分、果物は1つ分がみかん1個などと示されている
1日分の料理例(『食事バランスガイド』より)

ポイント2 見えない伏兵、「油脂」に気をつけよう!

料理の中に「伏兵」が潜んでいることがあります。調理に使われる油やサラダのドレッシング、肉の脂身などのことです。これらの油脂は計量でもしない限り量を把握できません。料理の見た目の大きさから「1つ」と数えても、実際はもっと高カロリーのことがあるのです。

油は高カロリーで、メタボの大敵。調理油やドレッシングの量に注意し、肉の脂身は極力控えましょう。

ポイント3 特定の検査値をピンポイントで狙い撃ち!

ポイント1と2は、メタボのおおもとである内臓脂肪を減らす作戦。これに加え、すでに高血圧、糖尿病、高脂血症、高尿酸血症(痛風)などを発症している方の場合、それらに狙いを定めた作戦を実行すると、より効果的です。

ピンポイント作戦の覚え書き

血圧を下げる…塩分を減らす

血糖値や中性脂肪を下げる…アルコールや菓子(甘い物)を減らす。果物を食べすぎない。夜食を控える。主食を適量にする

コレステロールを下げる…脂っこいものを控える

尿酸値を下げる…アルコール(とくにビール)を減らす。プリン体の多いレバーや魚の干物などを食べすぎない

メタボは氷山にたとえられる
メタボリックシンドロームを氷山にたとえた図。海面下の大きな本体が内臓肥満で、海面上に突き出た小さな頂きが高血糖・高血圧・高尿酸血症・高脂血症として描かれている

メタボはよく氷山にたとえられます。氷山の大部分は海面の下に沈んでいて、海面上に突き出ているのはわずかな部分です。そのわずかな部分が、メタボにおける血圧や血糖、中性脂肪、コレステロール、尿酸などの検査値の異常に該当します。そして、海面下にある氷山の本体が、メタボにおける内臓脂肪です。

氷山を小さくしたいとき、海面上に出ている部分を削っても、氷山全体が浮き上がってくるので、山の高さはあまり低くなりません。それよりも海中に隠れている氷山の本体を減らせば、複数の氷山の頂きを同時に低くすることができます。

メタボの治療も同じで、内臓脂肪を減らせば、複数の検査値の異常が同時に改善されていくのです。しかし、特に高い危険な山があれば、その山を直接削ることも考えないといけません。それが、本文のポイント3で述べた、高血圧に対する減塩などに該当します。

ポイント4 頼れる援軍をみつけて味方につけよう!

手強いメタボの退治には、援軍を要請するのも1つの手。カロリーや塩分だけでなく栄養バランスにまで気を配った商品や、管理栄養士とプロの料理人の手による本格的でヘルシーなメニューが、通信販売などで数多く販売されています。冷凍タイプもあって大変便利。長丁場の作戦継続には、こういったサービスを「味方」として利用することも必要です。

メタボ退治の具体例 ~作戦の奥義の巻~

いよいよ作戦の詳細を解説します。ここでは40代のメタボな男性、Aさんを例にとって話を進めましょう。

これまでのAさん

Aさんは単身赴任中のサラリーマン。仕事はデスクワーク中心です。昔は標準的体型でしたが30代から太り始め、40代でメタボの仲間入り。

そんなAさんの食生活はというと、朝食は時間がないので食べずに出勤。昼食はラーメン、チャーハン、カレーライスなどのお決まりメニュー。夕食も帰宅途中に馴染みのお店に立ち寄って済ませることがしばしば。もちろん食事のお共にビールか焼酎。しかしAさん、最近テレビでメタボの怖さを知り、その退治を決意しました。

Aさんの工夫

朝食を食べる 朝、少しだけ早起きして、前の晩にコンビニで買っておいた、おにぎりや果物を食べたりするようにしました。

コマで見ると…『食事バランスガイド』のコマを見ると、おにぎりはごはんですからコマの一番上の「主食」に当たります。仕事がデスクワークで身体活動量が少ない男性のAさんの場合、主食の適量は「5~7つ」。さらに、メタボですからもう1つ少なくして、上限を「6つ」にします。おにぎり1個は「1つ」ですから、昼食と夕食であと「4~5つ」食べるようにします(次の表参照)。

対象特性別・料理区分の摂取目安

エネルギー対象主食副菜主菜牛乳・乳製品果物
1,800kcal(±200kcal)男性70歳以上/女性70歳以上/女性70歳未満の成人で活動量低い4~5つ5~6つ3~4つ2つ2つ
2,200kcal(±200kcal)=基本型男性70歳未満の成人で活動量低い/女性70歳未満の成人で活動量ふつう以上5~7つ5~6つ3~5つ2つ2つ
2,600kcal(±200kcal)男性70歳未満の成人で活動量ふつう以上7~8つ6~7つ4~6つ2~3つ2~3つ

活動量の見方 「低い」:1日中座っていることがほとんど。「ふつう」:座り仕事が中心だが、歩行・軽いスポーツなどを5時間程度行う。さらに強い運動や労働を行っている人は、適量調整が必要。

肥満・メタボの場合 肥満(メタボ)の場合には、体重変化をみながら適宜、エネルギーの量を「1ランク(200kcal)」下げるなどの工夫が必要。

果物はコマの一番下の右側で、1日に「2つ」とることになっていて、みかんなら2個、リンゴなら1個ぐらいが適量です。

お酒の回数を減らす 食事の前にまずお茶を飲む習慣にしました。すると夕食のときもビールやお酒から始まることが少なくなりました。また風呂上がりは、ミネラルウォーターを飲むようにしました。

コマで見ると…アルコールはコマの本体には入っておらず、コマを回すヒモとして表現されています。お菓子やジュースと同じ嗜好品で、これらは摂取するなら「適量」を守ることが大切。Aさんが習慣的なアルコール摂取をやめ、そのかわりにコマの軸となっている水やお茶を飲むようにしたのは賢明な方法です。

夕方にヨーグルト いつも夕方になると空腹になるので、ヨーグルトを食べるようにしました。

コマで見ると…ヨーグルトは一番下の左側の「牛乳・乳製品」の「1つ」に当たります。「2つ」が適量なので、1日の中であと、牛乳をコップに半分ぐらいか、チーズを1片ぐらい食べるとよいようですね。

主菜を減らして副菜を増やす Aさんの食事はこれまで、ごはん+おかず(主菜)1品のみというスタイルが多かったので、なるべく主菜の量を減らし、その分、別のおかず(副菜)をつけるようにしました。

コマで見ると…主菜はコマの真ん中の段、副菜はその一つ上の段です。コマのバランスを保つには、肉や魚・卵料理・大豆食品などを使ったメインのおかずよりも、野菜・きのこ・いも・海藻を使った付け合わせ料理が多いほうがよいのです。

Aさんは今、主菜が「4つ」、副菜が「6つ」になるように心掛けています。外食の際に必ずサラダを追加し、おかずは少し残し気味にします。おなかがすいててごはんをたくさん食べてしまいそうなときには、まずサラダを食べると空腹感が減り、ごはんを多く食べずに済むことに気付きました。ときにはサラダを2皿注文することもあります。

コンビニ弁当にももちろんサラダをつけますし、酢の物やほうれんそうのお浸しなども、よく買うようになりました。自分で料理するときには、野菜の具をたくさん入れた味噌汁を作ります。

食事のその他の工夫 油をとりすぎないように、フライやてんぷらなどの揚げ物を減らし、ドレッシングはノンオイルタイプにしました。また、見えない油がたくさん入っているカレーやシチューも控えるようにしています。

しかし、Aさんは栄養について専門的なことを勉強したことがないので、少し不安もあります。そこで、コンビニで栄養成分表示のある食品を選ぶようにしました。また、メニューに栄養成分表示がある外食店や、カロリー調整された冷凍食品をよく利用しています。

運動量を増やす バス通勤のAさん。残業のない日はバスを使わず、歩いて帰るようにしました。

コマで見ると…コマは回っていないと倒れてしまいます。運動は、コマを回し続ける動力です。

ウエストと体重をチェック Aさんは、ウエストサイズと体重を測ってノートに記録し始めました。ウエストや体重がなかなか減らなければ、コマの「つ」の総数を少なくしたり、運動量を増やしたりするつもりです。

1年後のAさん

このようにメタボ退治を始めたAさん。2か月後にウエストがベルトの穴1個分、細くなりました。1年後はどうなっているのでしょうか? さらにスッキリして、見違えるようになっているかもしれませんね。

さて、次はあなたの番。レッツ・スタート!

この記事は冊子「わかりやすい病気のはなし」シリーズ38『メタボリックシンドロームの人の食事』(2007年4月発行)をもとに作成しています。