どうして血圧が高いと、いけないのでしょうか?

「血圧が高いといわれたから塩分控えないと…」という会話が挨拶替わりになるくらい、日本人には高血圧が身近な病気です。でも「高血圧のせいで、からだがつらくて困っている」という話は聞きません。自覚症状は問題にならないのに、なぜ血圧が高いといけないのでしょうか。

ひとつの統計を紹介します。福岡県の久山町で行われた調査研究で、住民を血圧の高さでいくつかのグループに分け、長年、追跡調査したものです。結果はグラフのとおりで、血圧が高いほど、脳卒中の危険が高いことは明らかです。

血圧値別にみた脳卒中の発症率。人口千人・1年間あたりの発症率は、収縮期120未満かつ拡張期80未満で7.3、120-129または80-84で8.9、130-139または85-89で12.5、140-159または90-99で23.8、160-179または100-109で23.8、180以上または110以上で61.7(久山町研究)

もちろん、高血圧の怖さは脳卒中だけではなく、脳以外にも多くの臓器・部位にさまざまなかたちで悪影響(=合併症)が現れます。高血圧を治療するのは、そうした合併症を未然に防ぐためです。

高血圧の基礎知識

ここで、高血圧が起こる仕組みを解説しましょう。

血圧とは、高血圧とは

血圧とは、血液が動脈を流れる際に血管の内側にかかる圧力のことです。よく、血圧の「上」とか「下」という言い方をしますが、上は心臓が収縮して血液を送り出したときの「収縮期血圧(最高血圧)」のことで、下は心臓が拡張したときの「拡張期血圧(最低血圧)」のことです。

収縮期血圧が140mmHg以上、拡張期血圧が90mmHg以上のとき、高血圧と診断されます。

血圧を左右するもの

血圧は、心臓から押し出される血液の量(心拍出量しんはくしゅつりょう)と、血管の太さ(正確には血管内径)・血管壁の弾力性によって決まります。血液の量が多ければ血管の壁には強い圧力がかかり、高血圧になります。また、末梢の血管がなにかしらの理由で収縮したり、または血管が硬く細くなると血圧が上がります。

心臓のポンプ機能が順調で動脈に弾力性があれば、血圧は正常です。

高血圧が起こる二つの仕組みの図。血管の収縮や動脈硬化で末梢の血管が細くなる場合と、血液量が多くなって血管の壁にかかる力が強くなる場合を、心臓を蛇口にたとえて示している
血圧を上げるもの・下げるもの

血圧を上げるもの 塩分の摂りすぎ/加齢/ストレス/激しい運動をしたとき/寒さ(冬)/外気温の急変(入浴時の脱衣やいきなり熱いお風呂に入ったとき、冬季に暖かい室内から外出するときなど)/睡眠不足/過度のアルコール摂取/便通時などの力み/日常の運動不足/肥満・過体重/遺伝による体質/動脈硬化などの病気/性格(すべてを一人で抱え込むタイプの人)

血圧を下げるもの 休養/睡眠/運動習慣/暑さ(夏)/入浴(ぬるめのお湯で)/少量のアルコール摂取

高血圧になりやすいのはどんな人?

年齢別にみた高血圧の頻度のグラフ。男性は20歳代の13%から年齢とともに増え70歳以上で73%、女性は20歳代の4%から増えて70歳以上で71%(厚生労働省「平成28年国民健康・栄養調査」より)

高血圧の人の大部分は、血圧を上げる原因を特定できない「本態性高血圧」というタイプです。腎臓や神経系などの何らかの遺伝的な異常に、塩分の摂りすぎや過食などの生活習慣・環境の要因が加わって起こります。

患者さんの数は少ないのですが、血圧を高くする明らかな原因があって高血圧になっている場合もあり、「二次性高血圧」といいます。腎臓の病気や内分泌ないぶんぴつの病気などが該当します。二次性高血圧では多くの場合、その原因となっている病気を治療すると、血圧が下がります。

高血圧の症状は?

多少血圧が高くても、自覚症状がないのがふつうです。血圧がかなり高いときは、頭痛やめまい、肩こりなどが起きやすくなります。しかし、こういった症状は血圧とは関係なしによく現れるものですから、高血圧は自覚症状があてにならない病気といえます。だからこそ症状があるなしに関わらず、検査・治療を受ける必要があるのです。

高血圧の悪影響

高血圧状態では、血管の壁につねに強い圧力がかかっています。血管壁はその圧力に対応して、次第に厚く硬く変化し、動脈硬化が進行しやすくなります。その結果、血管の弾力性が失われて、血管内部はますます狭くなり、血圧がさらに上昇する悪循環に陥ることがあります。この悪循環が続くと、やがて「合併症」が起こることもあります。

血管の多い臓器ほど合併症が起きやすい

高血圧の影響はまず、血管壁が弱い細い血管に現れ、細い血管が多い臓器ほど早く障害されます。具体的には、脳や眼(網膜)、腎臓などです。さらに、高血圧が長期間続き、太い血管の障害が起きると、脳卒中や心臓病、あるいは動脈瘤破裂という、生命を脅かしたり身体に障害を残すような、重い病気が起こってしまうことがあります。

一般に合併症は一度起きてしまうと治すのが難しく、病気の進行を抑えることで、治療は精一杯になってしまいます。ですから高血圧は、合併症が起きる前に治療を始めることが大切なのです。

高血圧のおもな合併症(臓器障害)現れる症状・病気
脳脳の血管が詰まる脳梗塞と、血管が破れる脳出血があります。発作時は麻痺や舌のもつれ、めまい、嘔吐、意識障害などが起きます。
眼(網膜)眼底出血などが起こり、視力が低下することもあります。
心臓冠状動脈の動脈硬化による狭心症や心筋梗塞、高血圧に対応し心臓がオーバーワークを続けた結果生じる心肥大(心臓の壁が厚くなった状態)、それらによる心不全などが起きます。
腎臓尿にタンパクや赤血球が出たり、むくみなどが現れます。腎機能低下が進行すると、人工透析を受けないと生命を維持できなくなります。
注意 脳卒中の症状や心筋梗塞と思われる激しい胸痛発作が現れたら、直ちに救急受診することです。

血圧測定と合併症の検査

症状が現れずにからだを蝕む「静かな殺し屋」高血圧。その治療には、検査を受けて血圧がどのレベルにあるのか、合併症の気配はみられないか、つねにチェックしておく必要があります。

検査の基本は血圧測定です。血圧は時々刻々と変化していますから、現在では診察室よりも、同じ時間帯に同じ状態で測定される家庭血圧が、合併症を予防する上で重視されています。通常、家庭血圧のほうが診察室血圧より安定しています。なお、病院で測ると家庭での測定値よりもかなり高くなる人がいます。これは「白衣高血圧」といって、医師や看護師に囲まれることの緊張によるものです。

病院では血圧以外に、眼底検査で血管の状態を確認したり、心電図検査、胸部レントゲン検査、血液や尿の検査で高血圧の原因や合併症を調べます。

血圧自己測定のポイント
  • 信頼性が高い上腕で測るタイプの自動測定器を使いましょう
  • 測定器の説明書をよく読んで、正しい方法で測定しましょう
  • 朝晩2回の測定が勧められ、朝は起床後1時間以内で服薬および朝食の前に、晩は就寝前に、同じような状態で測定しましょう
  • 測定値は毎回記録して、通院時に主治医に見せましょう。診察の際の治療効果の評価や治療法変更のための大切な情報源ですので、測定した血圧はすべて記録します(1機会の測定は原則2回とし、その全ての値を記録します。1日に1回しか測定できない日もあるかもしれませんが、なによりも測定を続けて記録していくことが重要です)

血圧をコントロールする生活

降圧目標=どこまで血圧を下げるのか

血圧をどの程度にコントロールするかは、医師が患者さんの年齢や合併症の有無などを総合的に判断して決めます。一般的な目安は収縮期血圧と拡張期血圧がそれぞれ140/90mmHg未満ですが、後期高齢者では150/90mmHg未満とやや高めに設定したり、糖尿病や進行した腎臓病の患者さんでは130/80mmHg未満と低めに設定することがあります。

降圧目標(単位:mmHg)診察室血圧家庭血圧
若年、中年、前期高齢者患者140/90未満135/85未満
後期高齢者患者150/90未満
(忍容性があれば140/90未満)
145/85未満(目安)
(忍容性があれば135/85未満)
糖尿病患者130/80未満125/75未満
CKD患者(蛋白尿陽性)130/80未満125/75未満(目安)
脳血管障害患者
冠動脈疾患患者
140/90未満135/85未満(目安)

〔日本高血圧学会『高血圧治療ガイドライン2014』より〕

「減塩・減量が基本」といわれる理由わけ

高血圧の治療では、まず生活習慣を見直すことから始めます。そうしないと治療効果が上がらないばかりか、高血圧以外の生活習慣病や合併症が進行してしまうからです。高血圧治療の目的はあくまで合併症を防ぐことで、血圧を下げるのはその手段に過ぎません。塩分の多い食生活や肥りすぎを放置し、薬で血圧だけ下げたとしても、治療の意味は半減してしまいます。

一番のポイントはやはり減塩です。塩分は水分を引きつける作用があり、そのため血液量を増やしますし、同時に血管を収縮させ血圧を上げます。急に厳しい減塩に取り組むと続かなくなりますから、無理のない程度の減塩から始めましょう。1日1gの減塩で収縮期血圧が約1mmHg低下することが報告されています。外食時にどのお店も味付けが濃いと感じるようになったら、塩分控えめの食生活が定着してきたといえます。

減塩のアイデアいろいろ
  • 調味料は少なめに
  • だしのうまみを生かす
  • 食酢やかんきつ類の酸味、香辛料を使って味付けにアクセントを
  • 減塩しょうゆや減塩みそ、ナトリウム含有量が少ない塩(カリウムが多い塩)を使う
  • 一品に集中して食塩を使い、あとは無塩で
  • 麺類のスープは飲まない
  • 漬物や汁物は少なめに
  • 料理全体に味をつけるのではなく、料理の表面に味付けを(例えば魚料理は、煮付けるよりも焼き魚か付けしょうゆで)
  • うす味に慣れ、食材のもっている味を楽しむ
  • 新鮮な食材を使って料理する
  • インスタント食品はできるだけ控える

食塩1日6g未満を目標に!

からだを動かし、気分転換を

運動は、血管を広げて血行をよくし血圧を下げます。また、減量やストレス解消にもよく、高血圧の治療には欠かせません。ただし、急に激しいスポーツを始めるのではなく、医師の指導を受け、ウォーキング(早歩き)などの毎日気軽にできる運動から始めましょう。

運動の目安

1分間の脈拍が100〜120(10秒で約20)になる程度の運動を、1回1時間なら1日おき、1回30分なら週に5〜6日行うとよいでしょう。

精神的ストレスは、血管を収縮して血圧を上げます。かといってストレスをすべて排除することなど不可能ですから、趣味や社会活動などの気分転換になる時間を作ってみましょう。また、疲れた心を休めるため、睡眠は十分とりましょう。寝不足は高血圧の原因の一つです。

お酒はほどほどに。たばこはぜひやめてください

アルコールは少量なら血圧を少し下げますが、飲みすぎると血圧が上がり心臓の負担も増えます。目安として、1日に日本酒で1合、ビールなら中ビン1本までがよいといわれています。喫煙は血管を収縮させたり血管壁を傷つけ、動脈硬化の進行を早めるので、合併症の危険がより高くなります。

目標まで下がらないときには薬を服用

生活習慣を見直し、是正しても十分に血圧が下がらない場合は、降圧薬が処方されます。降圧薬にはいくつかの種類があり、病状に応じて処方されます。それぞれに服用の注意点、現れやすい副作用などがありますから、医師や薬剤師の説明をよく聞いて、正しく飲み続けましょう。

なお、「薬を飲み始めると一生飲まなければいけないからまだ飲みたくない」という方がいますが、これは本末転倒な言い方です。なぜなら「薬を飲まずにいれば高血圧が治る」わけではないからです。

高血圧は、自覚症状がなくても合併症が起こることがあり、その合併症を起こさないために薬を飲むのです。ただし、人によっては薬を減らせたり、服用を一時中止できることもあります。

なにより治療を続けることが大切です

血圧は徐々に下げるもの

薬物治療を始めるときは、数か月かけて少しずつ血圧を下げていきます。急に血圧を下げると、活力がなくなり生活の張りが失われたり、脳梗塞の危険がやや高くなるからです。このため最初のうちは、作用が弱めの薬が少なめに処方され、全身の状態をみながら薬の量や種類が調節されます。「きちんと薬を飲んでいるのに血圧が下がらない」といって通院をやめたり病院を変えたりすると、薬の効果を十分に得られません。

降圧治療の継続と生存率のグラフ。5年後の生存率は、適切な治療を続けたグループが約93%、治療が十分でなかったグループが約86%、治療しなかったグループが約77%、途中で治療をやめてしまったグループが約69%

自己判断で薬の服用をやめない

薬は指示どおりの服用を心掛けてください。例えば家庭血圧の結果から自己判断で飲んだり飲まなかったりするのは、血圧コントロールを乱し危険です(はね返り現象により血圧が急に高くなることがあります)。薬の飲み方については、必ず主治医に相談してその指示に従ってください。

なお、薬を飲んだあとにめまい・ふらつきなどの異常を感じたり、発疹ほっしん・かゆみなどが現れたら、どんなことでも構わないので、主治医に伝えてください。

血圧が下がっても定期的な検査は忘れずに

治療を続けていて血圧が安定してくると、気がゆるみがちなもの。でも安心しきってはいけません。一度高血圧になった人は、もともと血圧が高くなりやすい体質ですから、しばらく薬を中止していると、再び高くなることが多いからです。たとえ今、薬を飲まずに血圧をコントロールできているとしても、血圧の変化を見逃さず合併症を予防・管理するために、定期的な通院を欠かさないようにしましょう。

高血圧はありふれた病気です。高血圧が見つかったら、一病息災のつもりで気長に自己管理を続けていってください。合併症さえなければ、健康な人とあまり変わらない生活を送ることができるのですから。

この記事は冊子「わかりやすい病気のはなし」シリーズ9『高血圧』(2018年4月発行)をもとに作成しています。