はじめに

痛風の発作で受診した方へ

突然、関節が激しく痛み、慌てて医療機関に駆け込んだあなた。痛む場所が足の親指で、あなたが男性なら、それは「痛風」の可能性が高いと考えられます。まずは痛みを鎮める治療を始めますが、痛みが治まるまでの間、ぜひこの小冊子パンフレットをお読みになってください。痛風の再発や高尿酸血症の合併症を防ぐために。

「尿酸値が高い」と指摘されて受診した方へ

「どこかが痛いわけでもないが、尿酸値が高いと言われたのでとりあえず受診した」というあなた。恐らく、本当に治療が必要なのか半信半疑ではないかと思います。この小冊子で治療の必要性を理解して、尿酸値のコントロールを続けてください。

治療は3ステップで

痛風や高尿酸血症を治療する目的は、3つのステップに分けると、わかりやすくなります。

ステップ1 痛風発作(痛風関節炎)を鎮める

まず最初の治療目的は、痛風の発作(関節炎)が起きているときに、その発作を鎮めることです。

ステップ2 高尿酸血症を是正する

尿酸値が高い状態「高尿酸血症」には、さまざまな合併症があります(後述)。尿酸値をコントロールし合併症を防ぐことが、二番目のステップです。この治療はもちろん、痛風発作(痛風関節炎)の予防にもなります。

ステップ3 合併症を防ぐ

高尿酸血症の患者さんの多くは、高血圧、脂質異常症、腎不全、糖尿病などを合併する傾向があります。治療のステップ3は、これらの合併症を防ぎ、心臓病や脳卒中などの重症の病気を予防することです。

痛風の原因と尿酸値が上がる理由

それではここで、尿酸とはなにか、なぜ尿酸値が高くなるのか、痛風はどうして起こるのかについてお話ししましょう。

尿酸はからだの老廃物

食物中のプリン体と、体内の遺伝子やエネルギー消費に由来するプリン体から尿酸が作られ、腎臓を通って尿に混ざって排泄されるまでを示した図

尿酸は、からだの新陳代謝やエネルギー消費によってできる老廃物の一種です。尿酸になる前のもとの姿は、遺伝子(DNA)などの一部の「プリン体」という物質で、そのプリン体は、私たちの体内の細胞や食品中に含まれています。

細胞は毎日、新陳代謝を繰り返していますから、尿酸はいつも産生されて(作られて)います。産生された尿酸は血液中に溶け、腎臓でろ過されます。そして、ほかの老廃物と一緒に尿に混ざって体外に排泄されていきます。

尿酸値が高くなる原因

尿酸の産生と排泄を水槽にたとえた図。尿酸値正常、産生過剰タイプの高尿酸血症、排泄低下タイプの高尿酸血症の三つを比べている

通常、尿酸の産生量と排泄量はほぼ同じで、血液中の尿酸の量はほぼ一定に保たれています。しかし、尿酸の産生が増えすぎたり、腎臓からの排泄が少なかったりすると、血液中の尿酸が多くなります。

そのようなことから尿酸値が7.0mg/dL(血液1dLあたりに尿酸が7mg)を超えた状態が「高尿酸血症」です。

高尿酸血症は、尿酸値が高くなる原因によって、尿酸産生過剰型、尿酸排泄低下型、および、その両方が関係している混合型の3つにタイプ分けできます。

尿酸値が高いと、痛風になりやすい

尿酸値7.0mg/dLまでなら、尿酸は血液に溶けています。しかし7.0mg/dLを超えると溶けきらずに結晶となり、からだの隅々に蓄積され始めます。

本来なら尿酸は、体内に結晶としては存在しませんから、それを異物と判断した白血球が排除しようと試みます。しかし尿酸結晶は、次々に生成されます。そのため、さまざまな炎症反応が起こり、血流が盛んになって熱をもち、腫れあがって激しく痛みます。それが「痛風」の発作(=痛風関節炎)です。

尿酸結晶は温度が低い関節に溜まります。そのため、痛風発作も関節に起こります。とくに、足の親指の付け根の関節は、最も発作が起きやすい場所です。

高尿酸血症や痛風は若い世代の男性に多い

高尿酸血症の患者さんの大半は男性です。理由はよくわかりませんが、女性ホルモンの影響などが考えられていて、閉経とともに女性も尿酸値が少し高くなります。

現在、成人男性人口の20~30パーセントが高尿酸血症だと推測されています。痛風は以前、50歳以上の人に多かったのですが、今では30歳代で最初の発作を経験する人も増えていて、患者数の増加とともに、発病年齢の若年化が進行中です。

高尿酸血症の合併症

高尿酸血症は痛風以外あまり自覚症状が現れませんが、治療しないと次のような合併症が起きてきます。

腎機能障害 尿酸の結晶が腎臓の中に溜まって、腎臓の働きが低下します。また、尿酸の結晶が腎臓に溜まっていなくても、高尿酸血症のために腎臓の働きが低下することもあります。腎臓の働きが低下すると、尿酸の排泄力が余計弱くなり、尿酸値がさらに高くなるという悪循環が生じます。

尿路結石けっせき 尿酸値が高い人では尿が酸性になっていることがよくあります。そのような状態では尿の中にさまざまな結晶が形成されやすく、腎臓や尿管、膀胱、尿道に「結石」ができる原因になります。

痛風結節けっせつ からだのいろいろな所に尿酸の結晶が溜まり、硬い「結節」を作ります。まれには骨の中や脊髄せきずいに結節ができて、骨折や麻痺を起こすことがあります。

高尿酸血症と動脈硬化

高尿酸血症の患者さんが動脈硬化による病気(心臓病や脳卒中など)にかかる危険性は、健康な人の数倍に上ります。それが尿酸値が高いためなのか、それとも、高尿酸血症だと、高血圧、脂質異常症、糖尿病、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病や慢性腎臓病(CKD)を併発していることが多いためなのか、まだはっきりしていません。しかし高血圧を併発している場合は、高尿酸血症が動脈硬化の進行に悪影響を及ぼすことが示されています。

尿酸値が血液に溶けきる限界の7.0mg/dLを超えると、高尿酸血症から痛風、尿路結石、腎機能障害、動脈硬化による心臓病・脳血管障害が水面から現れることを波にたとえた図

尿酸コントロールの目標と、治療方法

尿酸値6.0mg/dL以下をめざして

高尿酸血症には痛風や数々の合併症がありますが、尿酸値をしっかりコントロールしていれば、それらを防ぐことができます。次の図をご覧になって、あなたに必要な治療をチェックしてください。治療の目安は、尿酸値6.0mg/dL以下です。

高尿酸血症の治療方法を示した流れ図。尿酸値9.0mg/dL以上、8.0mg/dL以上で合併症あり、7.0mg/dLを超えて痛風関節炎か痛風結節があり合併症もある場合は、生活習慣の改善に加えて薬物治療を行い、尿酸値6.0mg/dL以下を目安にする
※合併症:腎機能障害、尿路結石、高血圧、狭心症、心筋梗塞、糖尿病、メタボリックシンドロームなど
〔日本痛風・核酸代謝学会「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン(第2版)」より改変〕

尿酸値を下げて痛風や合併症を防ぐ生活

高尿酸血症の直接的な原因は、前に解説したとおり、尿酸の産生量が増えることと排泄力が弱まることですが、それではなぜそのような現象が起きるのかというと、一つは遺伝的なことがあり、もう一つは生活環境があります。ここで、尿酸値を下げるための生活についてアドバイスしましょう。

体重をコントロールする 高尿酸血症の患者さんの多くは、肥満か太り気味です。このような人が減量すると、それだけで尿酸値が下がります。ただ、あまりに急激なダイエットをすると痛風発作が起こりやすくなるので、少し時間をかけて減量してください。

アルコールは控える アルコールは尿酸の産生量を増やし、排泄量を減らすように働きます。ビールはプリン体含量も多いので、とくによくありません。ビールに限らず、アルコールは控えめにしましょう。

水分をよくとる 水をたくさん飲んで尿を増やすと、尿とともに尿酸がたくさん排泄されて、尿酸値が下がります。尿路結石を防ぐ意味もあります。

野菜を多く食べる 野菜をたくさん食べると尿がアルカリ性になって、尿路結石ができにくくなります。

適度な運動を続ける 運動は体重コントロールのために大切です。ただし息が切れるほどの激しい運動では尿酸が産生されるので、軽いジョギングや早歩き、水泳などの有酸素運動を続けましょう。

プリン体の多い食べ物を控える 尿酸の多くは、もともと体内にあるプリン体から作られるので、食べ物から摂取するプリン体を減らしても、それほど尿酸値は下がりません。とはいってもレバーなど、プリン体がとても多い食べ物を好んで食べるのは控えたほうがよいでしょう。

ストレス解消 精神的ストレスも尿酸値を上げることがわかっています。自分の時間を大切にして趣味をもつなど、ストレス解消法を見つけてください。

尿酸値は生活習慣のバロメーター

このような生活習慣は、血圧や血清脂質、血糖値なども改善します。実際、尿酸値は「生活習慣のバロメーター」とも言え、高尿酸血症の患者さんの多くが高血圧や脂質異常症、糖尿病・耐糖能異常(糖尿病予備群)などの生活習慣病を併発しています。

これらの病気は内臓脂肪の過剰蓄積(おなかが出てくるタイプの肥満)をもとに併発することが多く、動脈硬化を急速に進行させ心臓病や脳卒中を招きます。近年、その状態を「メタボリックシンドローム」と呼び、積極的に治療するようになってきました。尿酸値を下げる生活は、メタボリックシンドロームの改善にも有効だということです。

処方される薬について

高尿酸血症の治療のための薬「尿酸降下薬」は、尿酸の産生を抑えるタイプと排泄を促すタイプの二つがあります。高尿酸血症の原因や、合併症・併発症の程度から、どちらかのタイプ(または両方)が処方されます。

なお、薬の成分が腎臓から排泄されるタイプの尿酸降下薬は、腎臓の働きが低下している慢性腎臓病や高齢の患者さんでは、薬の量を少なめに加減されることがあります。ただ、比較的新しい尿酸降下薬は腎臓以外からも排泄されるので、腎臓の働きがかなり低下するまで、通常量のまま処方されます。

また前にも書きましたが、高尿酸血症の患者さんは尿路結石ができやすいので、結石をできにくくする(酸性尿を改善する)薬が処方されることもあります。

痛風発作が起きたとき、起きそうなとき

初めての発作では…

痛くて大変だと思いますが、がんばって医療機関を受診してください。痛む場所を高くすると、多少痛みがやわらぎます。医療機関では、痛み止めと、再発時のためにコルヒチン(後述)という薬が処方されると思います。

なお、尿酸降下薬による治療は初回の痛風発作が治まってからスタートします。尿酸値が急に変化すると痛風発作が起きやすく、尿酸降下薬の服用が発作を長引かせかねないからです。また、尿酸降下薬の服用開始後に、短期間で急激に尿酸値が下がった場合は、発作が再発しやすいことも知っておいてください。

発作の再発には…

痛風発作が起きる少し前に、「足がむずむずする」などの予感がすることがあります。その場合はすぐにコルヒチンを1錠飲んでください。コルヒチンは白血球の活動を抑えて発作を予防するように作用します。

発作が起きてしまったあとはコルヒチンはあまり効かないので、痛み止めを飲んでください。なお、発作の前から尿酸降下薬を服用していた場合は、発作中もその服用を続けます。ご自身の判断で服用量を変えないようにしてください。

この記事は冊子「わかりやすい病気のはなし」シリーズ34『痛風・高尿酸血症』(2014年1月発行)をもとに作成しています。