トイレが近くて困っている人はとても多い

急に尿意を催しあわててトイレにかけこみ、ホッとひと息。やれやれと安心したのも束の間、またもや尿意が…。トイレの不安のせいで家事や仕事に身が入らず、夜には何度も目が覚めてしまう──。

実は、このような「トイレが近い、トイレまでがまんするのが大変」という症状(頻尿ひんにょう、尿意切迫感にょういせっぱくかん)を感じている方が、国内に810万人もいると推定されています。なかには尿意をがまんできずに漏れてしまう(尿失禁にょうしっきん)という方も少なくありません。

このような症状の多くは治療で改善できる可能性があります。「年だから仕方ない」、「恥ずかしい」とあきらめずに、ぜひ一度受診してください。ひょっとしたら、なにかの病気の初期症状かもしれません。

年代別・男女別の過活動膀胱の有病率を示す棒グラフ。年代が上がるほど割合が高くなり、80歳以上では4割近くに達する

40歳以上の方の12.4%が、頻尿や尿意切迫感があり、これを人口にあてはめて計算すると、国内の過活動膀胱の患者数は810万人となります。〔「排尿に関する疫学的研究」日本排尿機能学会誌14:266-277(2003)より〕

尿が溜まる前に膀胱ぼうこうが収縮してしまう「過活動かかつどう膀胱」

「トイレが近い(頻尿)」という症状の原因は、実にたくさん考えられます。検査を受けてなにかの病気がみつかったなら、もちろんその病気を治すことが第一。ところが、検査をしても病気がみつからなかったり、原因と思われた病気を治療しても、症状があまり改善しないこともあります。そのような症状に、「過活動膀胱」と呼ばれる状態がしばしば関係しています。

「トイレが近い」のおもな原因

泌尿器の病気 感染症(女性に多い膀胱炎、男性の前立腺炎など)、前立腺肥大症、腹圧性尿失禁、膀胱結石、膀胱や前立腺のがん、間質性膀胱炎

泌尿器以外の病気 糖尿病、脳卒中の後遺症、脊髄せきずいの病気、睡眠障害(夜間頻尿と勘違いされやすい)

薬の副作用 降圧利尿薬、α遮断薬

その他 過剰な水分摂取、精神的な緊張や不安、加齢

膀胱の役割と排尿の仕組み

腎臓で作られた尿が尿管を通って膀胱に送られ、尿道から体外へ排出されるまでの流れを示した図

ここで膀胱と排尿の仕組みに触れておきます。

膀胱は、腎臓で休むことなく作り続けられている尿を一時的に溜めておく臓器です。膀胱の周りには排尿筋という筋肉があり、その筋肉はふだん、尿を溜めやすいようにゆるんでいます。

膀胱から尿の出口までの管を尿道といいます。尿道も尿道括約筋かつやくきんという筋肉で囲まれていて、こちらの筋肉はふだん、しっかり尿道を閉めつけ、尿が漏れ出すのを防いでいます。

膀胱には300~500mLの尿を溜めることができます。膀胱が尿でいっぱいになってくると、神経を通じて脳に信号が送られ、尿意を催します。そしてトイレに行き排尿の準備が整うと、脳から指令が発せられて、それまでゆるんでいた排尿筋が縮み、反対に尿道括約筋はゆるんで、尿が勢いよく排泄されます。

過活動膀胱の原因

この一連の仕組みのどこかがうまく働かないと、排尿のトラブルが起こります。過活動膀胱もその一つで、文字どおり「膀胱が活動し過ぎる」、つまり、膀胱内に尿がそれほど溜まっていないのに排尿筋が収縮して、急に尿意を催し頻尿を招く病気です。

原因はまだよくわかっていません。加齢や精神的ストレスのほか、溜まった尿の量を感知する膀胱のセンサーが過敏になっている可能性、脳の中にある排尿を司る部分や自律神経の乱れなど、いろいろなことが関係していると考えられています。

生活に支障が生じやすい病気

人は年齢とともにからだの諸機能が低下してきます。過活動膀胱もやはり中高年者に多い状態の一つです。

この病気は、周囲の人が考える以上に患者さん本人にとってつらいものです。トイレの不安のために外出を控えたり、尿失禁してしまう自分がなさけなく思えたりします。命を左右する病気ではないけれども、QOL(生活の質)が低下してしまうことが、過活動膀胱の特徴です。

過活動膀胱と診断されるのはこんなとき

前述の囲み記事で挙げたように、「トイレが近い」という症状を招く泌尿器(膀胱や腎臓など)の病気は数多くあります。それらの病気がないのに頻尿が続くのが、過活動膀胱です。

あなたの症状をチェックしてみましょう

質問③が2点以上で全体の合計点数が3点以上の場合、過活動膀胱の可能性があります。合計点数が5点以下は軽症、6~11点は中等症、12点以上は重症と考えられます。

質問症状頻度点数
①朝起きた時から寝る時までに、何回くらい尿をしましたか7回以下0
8~14回1
15回以上2
②夜寝てから朝起きるまでに、何回くらい尿をするために起きましたか0回0
1回1
2回2
3回以上3
③急に尿がしたくなり、我慢が難しいことがありましたかなし0
週に1回より少ない1
週に1回以上2
1日1回くらい3
1日2~4回4
1日5回以上5
④急に尿がしたくなり、我慢できずに尿をもらすことがありましたかなし0
週に1回より少ない1
週に1回以上2
1日1回くらい3
1日2~4回4
1日5回以上5
合計点数点

(過活動膀胱診療ガイドライン[第2版]:日本排尿機能学会編集, 2015年, リッチヒルメディカル, p105 表13. ©日本排尿機能学会)

患者さんが医療機関を受診すると、医師はまず、問診や簡単な質問用紙を使って症状を把握します。次に検査で、感染症(膀胱炎など)や尿路結石、前立腺肥大症、がんなどの病気がないかを調べます。それらの病気が該当しない、またはすでにしっかり治療しているのであれば、過活動膀胱のために頻尿になっていると判断されます。

超音波検査で残尿量を確認

なお、排尿時に尿が出切らず、膀胱に尿が残っているために頻尿になっているケースもあります(前立腺肥大症の患者さんに多い)。排尿直後なのに膀胱内に尿が100mL(高齢者では50mL)以上ある場合は、より専門的な検査・治療が必要です。

残尿量は超音波を使った簡単な検査でわかります。初診のときだけでなく治療中にも、薬の副作用のチェックなどのために受けていただくことがあります。

「排尿日誌」をつけてみませんか?

より的確な診断や治療のために、「排尿日誌」をつけると効果的です。いつもどおりの生活をしている日に(できれば数日間継続的に)、トイレに行くたび、その時間と尿の量を記録するのです。そしてそれを医師に見せてください。

排尿日誌からは、いろいろなことがわかります。例えばトイレの回数からは頻尿の程度、患者さんのつらさが客観的にわかります。1日の尿量が多ければ、水分のとり過ぎが原因かもしれません。逆に1日尿量が極端に少なければ、ほかの病気や薬の副作用の可能性も考えないといけません。

生活の工夫や薬の服用で、QOLをアップ!

患者さん自身ができる工夫や訓練

過活動膀胱の症状は、患者さんご自身のちょっとした工夫や訓練で、改善する可能性があります。

水分摂取量を減らす

「血液をサラサラにするため」といって、水分を過剰にとっている方がいます。確かに脱水状態では血液の粘り気が強くなります。しかし、喉が渇いていないときに水を飲んでもすぐに尿になってしまうので、“血液サラサラ効果”は維持されません。

頻尿でお困りなら、水分摂取量を少し減らしてはいかがでしょうか。なお、水分摂取を勧められている方は医師にご相談ください。

トイレの間隔を少しずつ伸ばす

頻尿が続いていると、次第に膀胱が小さくなってしまい、より症状が進んでしまうことも考えられます。それを防ぎ、トイレの回数を減らすために、尿意を少しがまんする訓練も効果が期待できます。

趣味などの好きなことに集中したりして気分転換すると、尿意がまぎれるのではないかと思います。最初は数分間のがまんからスタートし、少しずつがまんする時間を伸ばすようにしていきます。

骨盤底こつばんてい筋を鍛える

膀胱や子宮を支えている筋肉を骨盤底筋といいます。この筋肉を鍛えるトレーニングを続けることにより、効果が期待できます。

骨盤底筋トレーニング
あお向けに寝てひざを立てた姿勢と、四つんばいになった姿勢で骨盤底筋トレーニングをする人のイラスト
力を抜きやすい二つの姿勢の例(あお向けでひざを立てる/四つんばいになる)

尿道・膣(女性の場合)・肛門を、おなかの中に引き込むようにイメージして力を入れます。腹筋や腰の筋肉などには力を入れないようにします。からだに手を当てて、その筋肉が動いていないか確認してみてください。

力を入れて数秒~十数秒間数え、力を抜いて少し休み、また力を入れるということを何度か繰り返します。慣れるまでは、あお向けに寝てひざを立てたり、四つんばいになったりして、からだの力を抜いてやるとよいでしょう。慣れてきたら、仕事で座っているときでも、家事で立っているときでも、いつでもできます。

薬の効果と副作用

過活動膀胱には一般に、βベータ3作動薬や抗コリン薬という薬が処方されます。これらの薬は、排尿筋をコントロールしている自律神経に作用して、症状の改善を図ります。副作用として、尿が出にくくなったり、唾液の分泌が減って口が乾いたり、便秘が起こったりすることがあります。

また、薬の作用が強過ぎたときに、膀胱が収縮せず尿がほとんど出なくなってしまう、「尿閉にょうへい」という状態になることもあります。そのときにはすぐに薬の服用を止めて受診してください。薬を飲み始めてから最初の数週間以内に起こることが多い副作用です。

使ってみると便利な尿漏れパッド

このような治療をしても尿失禁してしまう場合、尿漏れパッドやオムツを使うとよいでしょう。使い始めるまでは少し抵抗があるかもしれませんが、使ってみるとその便利さに気付きます。使用していてもズボンやスカートの外からはほとんどわかりません。気兼ねなく外出できるので、「もっと早く使い始めればよかった」という患者さんもいらっしゃいます。

こんなときは専門医に診てもらいましょう
  • 血尿や濁った尿が出る
  • 排尿困難や排尿直後の残尿感を伴う
  • 排尿時または蓄尿時に痛みがある
  • 咳やくしゃみ、からだを動かすなど、姿勢の変化にあわせて急に尿失禁が起きてしまう
  • トイレに行けない状況のときに限って尿意を催す
  • 薬の効果が不十分、または効果が弱くなった

これらの症状には、感染症や結石、前立腺肥大症、腹圧性尿失禁などの病気や、精神的なことが影響しているのかもしれません。詳しい検査が必要なので、泌尿器科の専門医に診てもらってください。

何科を受診すればよいでしょうか?

現在なにかの病気で内科などに通院しているのであれば、まずは主治医に相談してください。主治医が、より詳しい診察が必要だと判断したときには、専門の医療機関を紹介してくれます。

前立腺肥大症と、どう違うのですか?

前立腺肥大症は、尿道を取り囲んでいる前立腺が加齢によって大きくなる病気です。程度に差はあるものの中高年男性にはかなり多くみられます。大きくなった前立腺に尿道が圧迫されるために、尿が出にくくなります。そのために膀胱に尿が残りやすく、それが頻尿の原因となります。過活動膀胱と併発することもあります。

薬を飲んで尿の回数を減らすと、腎臓に悪い影響はないでしょうか?

過活動膀胱の薬は、膀胱に尿を貯められるようにして、排尿回数を減らす薬です。腎臓に作用して尿の総量を減らすわけではないですから、影響はないと考えられます。副作用で尿閉が起きる心配はありますが、それは超音波検査などの残尿測定でわかります。

必要な時だけに薬を飲むのはいけませんか?

薬は医師の指示通りに飲むようにしましょう。自分で勝手に飲み方を変えることはやめましょう。

この記事は冊子「わかりやすい病気のはなし」シリーズ39『過活動膀胱』(2022年4月発行)をもとに作成しています。