最近EDという言葉をよく見聞きしますが、EDとはなんですか?

EDとはErectile Dysfunctionの略で、勃起障害と訳されています。勃起が不十分なために、性行為に支障があることをいい、具体的には以下のような症状をさします。あてはまることがあれば、早めに治療を考えてみてください。

EDの症状
  • 勃起の硬さが弱くなった
  • 勃起が短時間で萎えてしまう
  • 一度萎えると再勃起が難しい
  • 全く勃起しない

なぜ今日、EDが注目されるようになったのですか?

高齢者人口の増加や生活習慣病の多様化、社会的ストレスの増大などにより、患者数が実際に増えていると推測されます。近年、効果的な飲み薬が登場し「治せる病気」になったことや、ED治療によるさまざまな波及効果が明らかになったことなども、EDがクローズアップされている理由といえます。

なお、国内のED患者数は推計1,130万人、40歳以上の男性の3人に1人が該当するといわれています。しかし治療を受けている人は実際の患者数よりずっと少なく、ED治療の先進国であるアメリカなどと大きく異なります。日本人男性の多くが、手を伸ばせば届く幸せを享受していないのです。

ED治療の波及効果とは?

例えば高血圧や糖尿病、脳卒中・心臓病の後遺症のある患者さんがEDの治療を受けると、このような病気の療養やリハビリによい結果が現れることがしばしばあります。ED治療の効果を実感し「生きがい」や「人生の喜び」を再確認できること、ご夫婦の関係が円満になることなどが、そういった生活習慣病の治療の励みになるのでしょう。

逆にEDの相談から高血圧や糖尿病が見つかることもあります。また、ストレスによるうつ傾向のある患者さんでは、ED治療によって抑うつ気分障害が改善される方もいます。

高血圧や糖尿病、脳卒中・心臓病の後遺症がある人でもEDを治療できるのですか?

もちろんそれらの病気がない人に比べれば注意が必要ですが、治療を受けられないケースというのは、それほど多いものではありません。80歳を超えてED治療薬(PDE5阻害薬という飲み薬。後述)を服用している方もいるほどで、きちんと事前に検査を受ければED治療を行えます。

「自分は無理だろう」などとあきらめずに、まずは医師に相談してみてください。

ED治療薬(PDE5阻害薬)を服用できないケース
  • 狭心症の治療で硝酸薬(ニトログリセリン〈内服・舌下・スプレー・テープ・軟膏などのすべて〉や、ニコランジルなど)を使用している場合
    →ただし、内科の主治医に相談し、休薬できれば服用可能
  • 今までにPDE5阻害薬を服用してアレルギー(過敏症)を起こしたことがある
  • 心血管系の病気のために、医師から性行為が不適当だと診断されている(不安定狭心症、発作性頻拍症・心房細動、脈拍が40以下の徐脈じょみゃく、脈拍が100以上の頻脈ひんみゃくなど)
  • 重度の肝機能障害
  • 低血圧(90/50mmHg未満)や高血圧(170/100mmHg以上)で、その治療が不十分
    →ただし高血圧は、きちんと治療し病状を安定させれば服用可能な場合もある
  • 心筋梗塞発作や脳卒中のあと6カ月以内
  • 網膜色素変性症
性行為自体に不安があるケース
  • 慢性の安定した心臓病がある
    →ただし、毎日満員電車で通勤している人や、階段を1階から3階まで休まずに、息を切らさずに昇ることができる人は、性行為の運動耐応能として、まず問題はなさそう。気になることがあれば医師に相談を

EDの原因について教えてください

勃起現象は、陰茎の海綿体に大量の血液を送り込み、性行為が終わるまでその血液が流出しないように溜め込んでおくことで成立します。それには陰茎の血管と神経が健康に保たれていることが重要です。ですから血管障害や神経障害を起こす危険因子は、EDの原因ともなります。血管障害は加齢とともに進行しますが、高血圧や糖尿病などがあると、より早く進行し、EDのリスクが高くなります。

このほか、精神的ストレスや不安・緊張によるED、男性更年期におけるホルモン分泌の低下によるED、薬の副作用によるEDなどがあります。

糖尿病と高血圧が神経と血管を傷めつけ、EDのリスクを高めるしくみを示した図

治療を受けてみたいのですが、やはり泌尿器科に行かないといけませんか?

確かに以前は泌尿器科がED治療の中心でしたが、生活習慣病に伴うEDが増えていることを背景に、現在では内科が治療の中心になってきました。もちろん泌尿器科でも構わないですが、最初はまず、あなたのからだをよく知っている内科のかかりつけ医に相談するとよいでしょう。親しい調剤薬局があれば、その薬剤師に、詳しい医師の情報を尋ねてもよいかもしれません。ED治療を行っている医療機関情報を掲載しているホームページ(http://www.ed-info.net)も役立ちます。

病医院の受付で、何と言えばよいのでしょうか? 周囲の患者さんの視線も気になりますが…

例えばこのパンフレットを見せて「この診察を受けたいのですが」と言ってみてはいかがでしょうか。ED治療に力をいれている病医院なら、スタッフも心得て応対してくれるはずです。それに今ではEDに関する社会的な理解も深まりましたし、ED治療は本来すべての男性とそのパートナーにとって大切なことなのですから、周囲の視線をあまり気にすることはありません。

EDの薬はどのように作用して効果が現れるのでしょうか?

Q5でお話ししましたように、勃起現象をスムーズに起こすポイントは陰茎の血流量です。飲み薬のED治療薬「PDE5阻害薬」は、陰茎の血管を拡張して海綿体の血流量を増やし、勃起を促し持続させます。また、陰茎の血管障害の進行を抑える作用もあり、それによってEDの悪化を防ぐ働きもあると考えられています。

PDE5阻害薬が陰茎の血管を拡張し、海綿体への血流量を増やして勃起を促すしくみを示した図

薬は、いつ、どのくらい飲むのですか?

現在、国内で3種類のED治療薬(PDE5阻害薬)があり、それぞれに薬の成分量が異なるものが用意されています。どの薬のどの用量を使うかは、EDの症状や全身の健康状態、患者さんの生活スタイルなどを医師が総合的に判断して決め、患者さんに処方します。性行為を行う1時間ぐらい前に1錠服用(頓服とんぷく)してください。

初めての服用時は緊張のためか、やや効果が弱い場合があります。効果が不十分だったとしても、がっかりせずに、2回目以降に期待してください。ただし、必ず定められた時間(24〜48時間。薬の種類・用量により異なる)以上のあいだをおいて服用してください。

なお、薬の効果を補うために、次の囲みのような工夫をしてみるのもよいでしょう。

薬の効果を引き出す方法
  • 満腹時を避け、空腹時に服用してみる(薬の種類によっては食後に効果が弱くなることがあるため)
  • 睡眠を十分にとっておく
  • ほどよい飲酒(飲みすぎは逆効果)
  • パートナーと協力して、性的な刺激を工夫する
  • 無理そうなら焦らず、次回を楽しみに

副作用は?

まれに血圧が若干下がることがありますが、通常それが問題となることはありません。ただ、降圧薬を服用している場合は少し注意が必要ですから、医師の指示を守ってください。血圧低下のほかには軽い頭痛が起きることもありますが、一時的なものです。このほか稀な副作用として、視覚や聴覚の障害が報告されています。

重要なことは、狭心症治療薬のニトログリセリン製剤などと同時に服用してはいけないということです。狭心症の薬と併用すると、血圧が過度に低下することがあるからです。この点は十分理解しておいてください。

なお、患者さんから「薬を飲み続けると効果が弱くなるのでは?」という質問をよく受けますが、毎日継続して飲む薬ではないので、その心配はありません。

実際に受診すると、医師からはどんなことを聞かれ、どんな検査を受けるのでしょうか?

医療機関・医師によって診察の仕方は異なりますが、まず最初に簡単な問診票(症状やストレスの状況、アレルギーの有無、服用している薬などに関する質問票)に記入してもらうケースが多いと思います。そのあと検尿や血圧・脈拍測定、必要に応じて心電図検査、胸部X線検査などが行われます。ただし、かかりつけの医療機関を受診した場合や、人間ドックなどで最近(約1年以内に)同じような検査を受けて問題ないことがわかっている場合は、改めて検査はしません。

問診や検査を受けずに、薬を入手する方法はありませんか?

ED治療薬(PDE5阻害薬)はだれでも自由に入手できる薬ではなく、医師の処方せんが必要な薬です。「ED治療薬を入手できる」とうたったホームページなどもありますが、そのような経路で出回っているものが本物の薬かどうか保証はできません。実際に、1ケースに数錠だけ本物が入っていて、そのほかはすべて偽物だった商品が出回ったこともあります。

偽物の場合、もしも心臓発作などの事故が起きたときに、転送先の病院の医師は適切な救急処置の判断に手間取ります。仮に本物だとしても、PDE5阻害薬には禁忌事項(服用してはいけない人・状態)がありますから、不正規に入手せず、医師の診察を受けてください。

治療費はいくらぐらいかかりますか?

健康保険は適用されていませんので全額自己負担になります。実際にいくらかかるかは、個々人の検査の項目数等によって差がありますので(詳しい検査が必要な場合はその分高くなります)、医療機関で相談してください。

EDの薬を服用できない場合や、効果がなかった場合、あきらめるしかないのでしょうか?

なにかの病気のためにED治療薬(PDE5阻害薬)を服用できない場合は、まずその病気を治療し、病状を安定させてからPDE5阻害薬を試みます。薬の効果が不十分な場合は、詳しい検査をして原因を特定し、それに対する治療を進めます。泌尿器科医による専門的な治療や、心療内科でカウンセリングを行うこともあります。飲み薬のほかにも、治療方法はいろいろあるということです。

パートナー(夫)がEDの場合、妻はどのように夫に接すればよいのでしょうか?

ご夫婦で話し合い、治療をすすめてみてはいかがでしょうか。あなた(妻)の助言を夫は待っているかもしれません。また、ひょっとしたら精神的なストレスによるEDなのかもしれません。そうだとしたら、なるべく早く受診することが望まれます。

反対に、もしあなたご自身が性のことで悩んでいるのでしたら、やはり夫に相談してみましょう。夫がEDになる時期には、妻は更年期にあたることが多いために、腟内分泌の低下や性交痛などが現れやすくなるものです。産婦人科を受診するのもよいですし、夫のED治療の際に一緒に受診するのもよいでしょう。女性の性機能障害に対しても、潤滑ゼリー(薬局などで購入できます)を使うなど、きちんとした対処方法があります。

お二人の幸せのために、互いに性について話せる雰囲気を大切にしてください。

この記事は冊子「わかりやすい病気のはなし」シリーズ23『ED Q&A』(2016年10月発行)をもとに作成しています。