はじめに:C型肝炎は治ります

C型肝炎は、強力な薬の登場で治る時代に入りました。WHO(世界保健機関)はC型肝炎をなくす目標を2030年と定め、日本は達成可能な国に入っています。

肝臓がんの原因はC型肝炎が多い

国内では約3万7000人が肝臓がんにかかり、2万5,000人が亡くなっています。肝臓がんの主な原因は、B型肝炎ウイルス(HBV)やC型肝炎ウイルス(HCV)に感染したことによる慢性肝炎で、そのほかに多量飲酒によるアルコール性肝障害、メタボリックシンドロームに起因する非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)などがあります。近年では肝臓がんの原因として、NASHが増えていますが、それでも半数近くはC型肝炎由来であることがわかっています。

多くのキャリア(ウイルス保持者)が存在

C型肝炎ウイルスのキャリアは約100万人いると推定され、その中で肝炎を発症している患者さんは、C型は約30万人と推定されています。

C型肝炎
キャリア数約90~130万人(推定)
患者数約30万人(推定)
(慢性肝炎 約21万人/肝硬変・肝がん 約9万人)

他人事だと思っている人が多い

C型肝炎の人から肝臓がんが出てくるので、C型肝炎を大変怖い病気だと思われるかもしれませんが、C型肝炎はきちんと治療すれば、ほとんどの例でウイルスが無くなり、肝臓がんの発症を防げるようになっています。むしろ今、問題となっているのは、自分がC型肝炎であることを知らず、また知っていても他人事と思ってやり過ごしている人が、まだ多くいるということです。

無症状のまま肝硬変・肝臓がんに進む「C型肝炎」

C型肝炎とは、C型肝炎ウイルス(HCV)の感染によって引き起こされる肝臓の炎症のことです。HCVに感染すると、通常、急性の肝炎が起きますが、約3割の人は免疫力でウイルスはいなくなり、病気は治ります。しかし残りの約7割の人は、急性肝炎は治るものの、ウイルスを完全には排除できずに慢性の肝炎になります。

慢性肝炎では少しずつ肝臓が傷つけられて、やがて肝硬変かんこうへんに進行したり肝臓がんを引き起こしたりしますが、その間、自覚症状はほとんど現れません。慢性肝炎の進行スピードは非常にゆっくりしたものですが、50歳を超えるころから進行が早くなります。しかし今は、副作用が少ない薬を8~12週間飲むことで、C型肝炎のほとんどが治ります。しかも、医療費の助成制度があり、月に1万円~2万円の自己負担で治療できます。C型肝炎とわかったら、直ちに治療することが肝心なのです。

C型肝炎ウイルスの感染経路と対策

HCVに感染する経路として、1.妊娠・分娩に伴う母子感染、2.輸血などの血液製剤による感染、3.性行為による感染、4.針刺し事故や注射器の使い回しによる感染などがありますが、2、4の血液を介した感染が多いとされます。血液を介すというと、具体的には輸血・血液製剤や消毒の不十分な状態での医療器具の使用、カミソリの共用などです。このうち輸血・血液製剤と医療器具についてはすでに対策が徹底されていて、今後はほとんど心配ありません。日常生活でも、カミソリなどの血液が付着する可能性のあるものを共用しなければ大丈夫で、性交渉でもまず感染しません。ただ、出血を伴うピアスや入れ墨(タトゥー)の取扱には注意してください。なお、母子感染の確率が約1割あるといわれていますが、赤ちゃんの場合、成長過程で自然にウイルスがいなくなることが多く(約30%)、今はC型肝炎が治る薬もあります。

C型肝炎の病期の分類

C型肝炎は、病期(病気の程度)を表すF分類によって、がんの発生率をある程度予測できます。病期を正確に知るには肝生検が必要ですが、血小板数などから推定することもできます。

病期10年間での推定発がん率血小板数(/μL)
F0~F15%未満18万以上
F210~15%15万以上
F330~40%13万以上
F4(肝硬変)70~80%12万以下

C型肝炎の診断と治療を始めるまでの流れ

①まずは抗体こうたい検査で感染の有無をチェック

住民検診などでまず、血液中にHCVに対する抗体(HCV抗体)があるかないかを調べます。抗体とは、からだの中に入った異物をからだがしっかりと認識したことを示す物質です。結果が陽性なら、HCVに感染したことがあるという意味です。

②ウイルスが今もからだの中にいるかどうかを調べる

HCV抗体検査が陽性でも、今もからだにウイルスがいるとは限りません。免疫力や治療ですでにウイルスがなくなっている人もいます。そこで、HCV抗体陽性の人は、ウイルスがからだに残っているかどうかを調べる検査(HCV-RNA検査)を受けます。それが陽性の場合に、現在もウイルスに持続感染している、つまり、C型肝炎のキャリアだと判定されます。

③肝臓の傷み具合をみて治療方法を選ぶ

C型肝炎であれば、ALTや血小板数、ウイルス量、超音波(エコー)やCT、線維化マーカーや肝硬度測定(いずれも肝臓の硬さを調べる)、腫瘍マーカーなどの検査で、肝臓の傷み具合、肝臓がんがあるかどうかなどを調べ、治療方法を選びます。

ALTは肝臓に存在する酵素で、肝臓の細胞が壊されたときに血液中に流出します。その数値が高いほど、肝炎は早く進むと考えられます。血小板数は、肝炎が肝硬変へと進行する過程で、少しずつ減少してきます。血小板数が少ない場合、肝硬変に近づいた、または肝硬変になっていると考えられ、たとえALTが高くなくても、早い段階で治療が必要と判断されます。

病期がF0からF4へ進むにつれて血小板数が少なくなること、ALTが高いほど病気が速く(新幹線のように)進み、低いほどゆっくり(蒸気機関車のように)進むことを示した図

④ウイルスの量とタイプを調べる

ウイルスに対する治療が必要と判断された場合、ウイルスの量とタイプを調べます。HCVは、ウイルスの量が多ければ、その排除に時間がかかるであろうと予想されます。最近の経口抗ウイルス薬(DAAs)は、ウイルスのすべてのタイプに有効ですが、効果や治療期間が異なるものがあるため、治療法、治療期間を決める判断材料になります。ウイルスの量はHCV-RNA定量検査で、タイプはHCVゲノタイプ検査やセロタイプ検査でわかります。

治療の目的と方法

抗ウイルス治療と対症たいしょう療法

ウイルス肝炎の治療には、ウイルスを直接治療する抗ウイルス治療と、病気がなるべく進まないようにする対症療法があります。

C型肝炎は、すべての症例を治療対象にすることをガイドラインでは推奨しています。それは、HCVに感染すると、多かれ少なかれ肝炎を起こしていることに加え、肝臓に炎症や線維化のない正常の肝臓からも、がんができることがあるからです。

C型肝炎のウイルスに働く治療薬には、直接ウイルスに作用する飲み薬(DAAs)と注射薬のインターフェロン(IFN)製剤がありますが、DAAsを短期間使うことでほとんどが治り(HCVが排除される)、副作用も少ないため、DAAsをまず選びます。

何らかの理由や病気が進行していて抗ウイルス療法が出来ない場合に、対症療法を行うことがありますが、慢性肝炎だけでなく、黄疸や腹水などを認める進行した非代償性肝硬変、それらが見られない代償性肝硬変も抗ウイルス治療対象になるため、対症療法は限定されます。

C型肝炎の診断と治療導入の流れ図。①抗体の有無を調べる(HCV抗体検査、結果を本人に通知):陽性はC型肝炎に感染したことがある、陰性はC型肝炎の心配はない。②ウイルスの有無を調べる(HCV-RNA定量検査):陽性はC型肝炎キャリア、陰性はすでにウイルスは排除されている。②と③は省略して専門医紹介でも良い。③肝炎の程度・進み具合と肝臓がんの有無・肝臓の硬さなどを調べる(ALT・血小板検査、エコー・CT、血液マーカーなど)。肝臓がん・肝硬変が疑われる場合は直ちに、慢性肝炎・肝線維化が疑われる場合、肝線維化がないと考えられる場合(血小板22万以上)も一度は、(肝臓)専門医に紹介。専門医では、肝臓がんを治療後に抗ウイルス治療、または肝硬変治療を行いながら抗ウイルス治療/抗ウイルス治療/抗ウイルス治療を考慮
C型肝炎の診断と治療導入

抗ウイルス療法の実際

直接作用型抗ウイルス薬(DAA):ほとんどの人が治ります

わが国では、2023年9月現在、3種類のDAAsが使えます。DAAsは、変異ウイルス(ウイルスの構造が変化し、薬が効きにくくなる)が出ないよう、2種類以上のDAAを配合した薬です。

ハーボニー配合錠®はゲノタイプ1型、2型の慢性肝炎から代償性肝硬変に12週間投与しますが、腎機能が特に悪い人には使えません。マヴィレット配合錠®は、慢性肝炎から代償性肝硬変に使用でき、DAA治療歴のない1型、2型の慢性肝炎には8週間、それ以外(わが国では稀)は12週間の投与になります。エプクルーサ配合錠®は、慢性肝炎から非代償性肝硬変まで12週間の投与になりますが、DAAs治療でウイルス排除が出来なかった人には、リバビリンとの併用で24週間使用します。非代償性肝硬変のうち、Child-Pugh分類Cの高度肝障害がある人では、治療を慎重に検討する必要があり、肝臓専門医の判断を仰いだ方が良いでしょう。また腎機能が特に悪い人に、この薬は使えません。

DAAsの著効(SVR:ウイルスが無くなる)率は高く、非代償性肝硬変は92%、慢性肝炎から代償性肝硬変はいずれのDAAsも100%近くです。副反応もIFNに比べてはるかに少なくなっています。

初回のDAAs治療でウイルスを排除できなかった場合、肝疾患診療拠点病院などで、ウイルス変異を調べ、肝臓専門医により、慎重な治療薬の選択が行われます。

ゲノタイプ1型、2型HCVに対するDAAsの治療対象と使用期間

製品名\保険適用慢性肝炎・代償性肝硬変非代償性肝硬変
DAA治療歴なし前治療歴あり
ハーボニー配合錠®〇(12週)〇(12週)
マヴィレット配合錠®〇(8週)〇(12週)
エプクルーサ配合錠®〇(12週)〇(12週)
〇(リバビリンとの併用で24週)
〇(12週)

ペグインターフェロン(PEG-IFN)

1992年からわが国ではC型肝炎治療にIFN治療が行われてきました。その後、週1回投与のペグインターフェロン(PEG-IFN)で副反応が減り、治療効果が改善、さらにDAAとの併用で、当初10%程度であったSVR率が90%まで向上しました。2014年からIFNを用いないDAAs治療が始まり、今ではPEG-IFNは特別な場合以外、用いられなくなっています。

治療効果の判定とその後の検査

DAAsの治療では、治療が終わってから12週間後に効果を判定します。ただし、長い間肝炎にかかっていると肝臓が健康な状態に回復するまでに何年もかかり、肝臓がんが発生するリスクも残ります。従って治療が終わっても、引き続き定期検査が必要です。

その他

対症療法:抗ウイルス治療が出来ない場合

抗ウイルス治療でHCVを排除できない場合、肝炎の進行度、副作用などによって治療ができない場合、IFNを少量長期間使う、肝庇護剤、瀉血しゃけつ療法などの対症療法で、炎症を抑え、病気の進行を遅らせることがあります。

今、C型肝炎は、ほとんどがウイルス排除できるため、対症療法を選ぶ場合、抗ウイルス治療を行わないことによる不利益を、十分知っておく必要があります。

ALTを30U/L以下に保つ

2023年日本肝臓学会では、ALTを30U/L以下に保つことを提唱しました。ALTが30U/Lを超えると、肝臓の機能が低下している可能性があります。ALTを低く抑えることで、肝炎の進行、肝がんの発生が抑えられます。

治療後の発癌:治療が終わっても定期検査が必要です

C型肝炎は、抗ウイルス治療をすることで、肝臓がんの発生を半分程度に減らします。しかし、SVR後にも発がんは起き、高齢、男性、アルコールをたくさん飲む人、線維化が進んでいる(肝臓が硬くなっている)人、腫瘍マーカーのAFPが高い人などが危険です。SVRになっても、少なくとも10年、場合によってはそれ以上の定期検査が必要です。

C型肝炎における主な医療費軽減政策

C型肝炎を撲滅するために、以下のような政策がとられています。

肝炎ウイルス検診:無症状者、慢性肝炎、肝硬変の人に無償でおこなわれています。

初回精密検査費用助成事業:C型肝炎ウイルス検査で陽性とされた人が、医療機関で精密検査を受ける時、初回のみ自己負担額の費用を助成する制度があります。

肝炎治療費助成制度:抗ウイルス治療とそれにかかる検査費用に対して、自己負担の一部を助成します。一月1万~2万円の自己負担で治療できます。

定期検査費用助成事業:医療機関で定期検査を行った際、自己負担額のうち対象となる費用を助成する制度があります。

肝がん・重度肝硬変治療研究促進事業:入院医療費や、通院でも肝がんに対して高額な薬を用いている人を助成します。

身体障害者の認定基準の変更:Child-Pugh分類Cに加え、分類Bも身体障害者対象になりました。

C型肝炎検査結果を聞いてください

C型肝炎は、ほとんどが治る病気になりました。知らないで放置すると肝臓がんで命を落とす危険があります。検査や手術前、入院時などに、HCV抗体を測定した場合、陰性、陽性の有無にかかわらず、その結果を医師から必ずお聞きして下さい。陽性の場合、精密検査を行うか、検査ができる医療機関を紹介してもらって下さい。

暮らしの工夫

食べ過ぎを控えて適正体重を維持しましょう

食べ過ぎにより、肝臓に脂肪が溜まり病気が悪化します。食べ過ぎに注意し、適正な体重を維持しましょう。

食後の安静や運動制限の必要はありません

食後の安静や、あまり運動をしないと、肥満や脂肪肝を招くのでよくありません。適度の運動が必要です。

レバーなどの鉄分が多いものは控える

以前から“からだによい”と言われている食べ物のなかには、鉄分の多いものが少なくありません。レバーなどはその代表です。過剰な鉄分は肝臓に負担をかけますから、鉄分の多い食品はなるべく控え目にしてください。

アルコールはキッパリやめ、かわりにお茶を

アルコールは肝臓によくありません。C型肝炎でお酒を飲む人は、飲まない人に比べて病気の進行が早いことがわかっています。「適度の飲酒ならよい」わけでもなく、キッパリと断酒しましょう。かわりに鉄分の吸収を抑えてくれるお茶をたくさん飲むことをおすすめします。

この記事は冊子「わかりやすい病気のはなし」シリーズ25『C型肝炎』(2012年7月発行)をもとに、専門班による改訂原稿(2023年9月)を反映して作成しています。