脂肪肝とはどんな病気?

脂肪肝とは、肝臓の中に脂肪が過剰に蓄積する病気です。脂肪肝は、その原因によって非アルコール性脂肪性肝疾患とアルコール性脂肪性肝疾患に大別されます。非アルコール性脂肪性肝疾患とはおもに肥満が原因と考えられる脂肪肝であり、アルコール性脂肪性肝疾患とは長期にわたる過剰の飲酒が原因と考えられる脂肪肝です。両者は進行すれば、ともに肝硬変、肝臓がんに至る可能性があるという点で共通しています。脂肪肝の原因が非アルコール性であるかアルコール性であるかは、飲酒量によって鑑別します。飲酒量は、医学的には1日のアルコールの摂取量で表します。アルコールの摂取量は、お酒の摂取量(ml)×(アルコールの度数/100)×0.8(飲酒用アルコールであるエチルアルコールの比重)で計算します(表1)。

種類ビール日本酒焼酎ウイスキーワイン缶チューハイ
アルコール度数5度15度25度43度14度5度
アルコール量20g中びん(500ml)
1本
1合0.6合ダブル1杯グラス2杯350ml缶
1.5缶
30g中びん(500ml)
1.5本
1.5合1合ダブル1.5杯グラス3杯350ml缶
2.25缶
表1 アルコール量の換算表

非アルコール性の基準は、男性の場合1日のアルコール摂取量が30g未満、女性の場合20g未満です。アルコール性の基準は、男性の場合1日のアルコール摂取量が60g以上、女性の場合40g以上です。1日のアルコール摂取量が、男性で30g以上60g未満、女性で20g以上40g未満の場合は、非アルコール性、アルコール性の鑑別を明確にすることができません(図1)。

1日あたりのアルコール摂取量による区分を男女別に示した帯図。男性は30g未満が非アルコール性、60g以上がアルコール性で、30g以上60g未満はどちらとも区別できない範囲。女性は20g未満が非アルコール性、40g以上がアルコール性で、20g以上40g未満はどちらとも区別できない範囲
図1 1日あたりのアルコール摂取量

これから脂肪肝を非アルコール性脂肪性肝疾患(以下、「非アルコール性の脂肪肝」と表現します)とアルコール性脂肪性肝疾患(以下、「アルコール性の脂肪肝」と表現します)に分けて説明します。

非アルコール性の脂肪肝とは

非アルコール性の脂肪肝とは、おもに過食や運動不足による肥満を背景として発症する脂肪肝です。肥満は皮下脂肪型肥満と内臓脂肪型肥満に分かれますが、おなか回りが大きくなる内臓脂肪型肥満になると非アルコール性の脂肪肝を発症しやすくなります。通常、自覚症状はありません。近年、肥満人口の増加を背景に非アルコール性の脂肪肝の患者さんの数が増加しており、国内での人間ドック受診者の中で非アルコール性の脂肪肝を有している人の割合は、約30%にも及ぶことが報告されています。

非アルコール性の脂肪肝の病態

非アルコール性の脂肪肝の多くは肥満を背景として発症してくるため、糖尿病、高血圧症、脂質異常症などの生活習慣病の合併が多くみられます。生活習慣病があると、脳卒中や心筋梗塞を発症しやすくなることが知られていますが、非アルコール性の脂肪肝の患者さんが脳卒中や心筋梗塞を発症する割合は、一般人口の1.5~2倍と報告されています。

また非アルコール性の脂肪肝では、肝臓がんはもとより肝臓以外の臓器のがんも増加します。とくに、大腸がん、乳がんの発生は2倍前後に増えることが報告されています。

肝臓は、本来指で押さえればへこむような弾力性のある臓器です。非アルコール性の脂肪肝が進行すると、肝臓の弾力性が失われて肝臓が硬くなります。そして、肝臓が硬くなると、肝臓の働きの低下が日常生活に影響を与え始めるようになり、肝臓がんが発生する危険性が高くなります。

非アルコール性の脂肪肝の死因は、1位が脳卒中や心筋梗塞などの病気、2位が肝臓以外の臓器のがん、3位が肝硬変や肝臓がんなどの肝臓の病気の順となります。肝臓と直接関連のない病気が上位になっていますが、非常に重要なことは、非アルコール性の脂肪肝においては、これらの病気はすべて肝臓の硬さが進展するに伴い増加することです。非アルコール性の脂肪肝が原因で肝臓が硬くなるのは、非アルコール性の脂肪肝全体の10~20%と推測されています。すべての非アルコール性の脂肪肝の肝臓が硬くなるわけではありません。ただし、現在のところ、非アルコール性の脂肪肝の肝臓が将来的に硬くなるかどうかを予測する方法は見つかっていません。定期的に観察を続けることが必要になります。

非アルコール性の脂肪肝の検査と診断

非アルコール性の脂肪肝の診断は、画像検査または組織学的検査により肝臓に脂肪蓄積を認めること、非アルコール性の脂肪肝としての飲酒量を越えていないこと、他の原因の脂肪肝を除外することで行われます。

肝臓の硬さに関しては、血液検査から推測することが可能です。いくつかの方法がありますが、スコアリングシステムという方法がよく用いられます。これは、血液の検査値を導かれた計算式に代入し、計算された数値によって肝臓の硬さを推測するものです。いくつかあるスコアリングシステムの中でもFIB-4 indexという方法は、血液検査によって得られるAST、ALT、血小板数の値と年齢を、(年齢×AST)÷(血小板数×ALTの平方根)の計算式に代入して計算できる簡便な方法であるため汎用されています。FIB-4 indexによって計算された値が1.30以上の場合、肝臓が硬くなり始めている可能性があるので精密検査が考慮されます。近年、肝臓の脂肪蓄積量や肝臓の硬さは、超音波検査やMRIを使って評価できるようになりました。これらの検査で、肝臓が硬いと判断された場合は、CT、MRIなどを用いて肝臓の中に腫瘍が発生していないかを調べます。

非アルコール性の脂肪肝の患者さんの生命予後を規定するのは肝臓の硬さであり、超音波検査、MRIなどによって肝臓の硬さを正しく評価することが臨床上重要です。

非アルコール性の脂肪肝の治療

非アルコール性の脂肪肝は肥満を背景に発症してくるので、治療の基本は、食事療法、運動療法による生活習慣の改善によって体重を減らすことです。本邦において、非アルコール性の脂肪肝に対して保険適用を有する薬剤は現在のところ残念ながら存在しませんが、糖尿病、高血圧症、脂質異常症などの生活習慣病に対する薬剤の中には、非アルコール性の脂肪肝にも有効性が示されているものが存在します。したがって、非アルコール性の脂肪肝に生活習慣病を合併する場合には、これらの薬剤の使用が考慮されます。

アルコール性の脂肪肝とは

アルコール性の脂肪肝とは、長期(通常は5年以上)にわたる過剰の飲酒が原因で発症する脂肪肝であり、アルコールによる肝臓の病気の初期段階の状態です。通常、自覚症状はありません。アルコール性の脂肪肝を発症した後も過剰な飲酒を継続すると、やがて肝臓は硬くなり、肝臓がんを併発する危険性が生じます。病気が進行すると肝臓が硬くなるのは、非アルコール性の脂肪肝と共通の現象です。

アルコール性の脂肪肝の病態

アルコール性の脂肪肝と診断される場合の飲酒量の基準については既に示しましたが、女性では、男性に比べて少ないアルコール摂取量でアルコール性の脂肪肝を発症することが報告されています。また肥満者では、1日のアルコール摂取量がアルコール性の基準に満たない量であっても、アルコール性の脂肪肝を発症してくる可能性があります。日本人においては、1日のアルコール摂取量が男性では40g以上、女性では20g以上で注意が必要と考えられています。

過剰なアルコールの摂取は肝臓以外の病気を引き起こすことにも注意が必要です。糖尿病、高血圧症、脂質異常症などの生活習慣病、心臓の病気、すい臓の病気、認知症、うつ病、アルコール依存症など多くの病気があげられます。

アルコール性の脂肪肝の検査と診断

アルコール性の脂肪肝の診断については、飲酒量の確認、血液検査、画像診断などで行います。1ケ月程度の禁酒によって肝臓の血液検査が明らかに改善することが特徴です。アルコール性の脂肪肝が進行し、肝臓の硬さが増してきているかどうかは、非アルコール性の脂肪肝と同様に超音波検査などが用いられます。FIB-4 indexは、アルコール性の脂肪肝の場合、肝臓が硬くなくても高い値を示すことがあるので注意が必要です。

アルコール性の脂肪肝の治療

アルコールによる肝臓の病気は、初期の段階では節酒でも改善が期待できますが、やがて進行し肝臓が硬くなってくると断酒をしなければ改善が期待できなくなります。過剰の飲酒が原因であるアルコール性の脂肪肝には、非アルコール性の脂肪肝と同様に糖尿病、高血圧症、脂質異常症などの生活習慣病の合併が多くみられます。以上から、アルコール性の脂肪肝の治療には、飲酒量の減量もしくは断酒とともに、生活習慣の改善が重要になります。

この記事は「わかりやすい病気のはなし」Web版のために、専門班が新たに執筆した原稿をもとに作成しています。