じんま疹 Q&A
Q1 じんま疹とはどんな病気ですか。湿疹と、どう違うのでしょう?
じんま疹とは、かゆみと発赤を伴った平たんな膨疹(浮腫、むくみ)のことです。ふつうは数時間で消えて治りますが、繰り返し現れたりすることもあります。1カ月以上続くものは、慢性じんま疹と呼んでいます。
じんま疹と湿疹で大きく違う点は、からだを包む一番外側の部分である「表皮」に、変化が起きているかどうかです。じんま疹は真皮の血管を中心にして起こる反応ですが、湿疹は、表皮と真皮上層とを中心にして引き起こされる反応です(皮膚の構造と働きは後述)。
Q2 じんま疹は、どのようにしてできるのですか?
からだの外から皮膚への直接的な刺激、あるいは薬や食物などによるからだの内側から皮膚への刺激によって、真皮にある肥満細胞からヒスタミンという化学伝達物質が放出されます。ヒスタミンは、皮膚の血管を拡張して血液成分を漏れ出させるため(漏出)、皮膚が平たく地図状に腫れます。またヒスタミンは、真皮の知覚神経を刺激して、かゆみを引き起こします。これがじんま疹です。
皮膚は、からだの表面を覆い、外からの刺激(外傷、日光、温度の変化、細菌やウイルスの侵入など)を阻止して、からだを守っています。また、体内の水分や体液が漏れだすのを防いだり、体温の調節、周囲の状況を感知する役割なども果たしています。
皮膚の構造は、表皮と真皮、および皮下組織の三つに大別できます(前述の図参照)。
表皮では、絶えず内側から新しい細胞が作られています。新しい細胞は、古い細胞を押し上げ表面に移動します。最表面に至った古い細胞は、アカやフケとなって剥がれ落ちます。
表皮の下の層は真皮といい、血管や神経が通っています。また、炎症を引き起こす化学伝達物質を包み込んでいる「肥満細胞」も、ここにあります。
真皮の下は、皮下組織と呼ばれ、おもに脂肪(皮下脂肪)で占められます。
じんま疹のおもな原因
ヒスタミンの放出を促す刺激、つまり、じんま疹の原因はいろいろあります。
- 皮膚への直接的な刺激(皮膚の摩擦や圧迫、温度の変化〈寒冷〉、日光、発汗など)
- ヒスタミンやその類似のもの、ヒスタミンの放出を促すものを含む食品(魚介類や卵白など)の摂取
- 皮膚に触れた物に対する局所的なアレルギー反応
- 飲食物や薬剤に対する体内でのアレルギー反応
- その他(細菌やウイルスの感染、ストレスなど)
Q3 じんま疹の治療方法を教えてください。
ヒスタミンによる皮膚の血管への悪影響の結果がじんま疹ですから、その治療には、ヒスタミンの作用を抑える「抗ヒスタミン薬」という薬が処方されます。また、ヒスタミンを含む化学伝達物質が肥満細胞から遊離するのを抑える薬(一般的に抗アレルギー薬と呼ばれている薬)が処方されることもあります。ケースによっては(気道が狭くなるなど、皮膚以外の症状がある場合)、ステロイド薬が必要なこともあります。もちろん、薬による治療だけでなく、じんま疹を起こす原因が判明した場合は、それを除去することで、治療し予防します。
アトピー性皮膚炎 Q&A
Q4 アトピー性皮膚炎とは、どんな病気ですか?
アトピー性皮膚炎は、かゆみを伴う湿疹が、よくなったりひどくなったりしながら慢性的に続く病気です。乳幼児期に発症しやすく、たいていは成人するまでに治りますが、成人後まで長引いたり、成人してから発症することもあります。年齢により湿疹の現れやすい部位に差があるのも、この病気の特徴です。
乳児 湿疹は口の回りに現れやすく、顔や首、上半身全体に広がっていきます。
幼小児 皮膚が全体に乾燥しがちになり、湿疹はひじやひざの裏側にできやすくなります。
思春期・成人 上半身から全身へと湿疹反応が広がり、顔が赤みを帯びてきます。頸部に、さざなみ様の色素沈着がみられることもあります。
Q5 アトピー性皮膚炎は、どのように起きるのですか?
大きく分けて、二つの要素が発病に関係しています。一つはアレルギー反応を起こしやすい遺伝的な体質、もう一つは皮膚の本来の役割である、外からの刺激を防ぐ働き「バリアー機能」の低下です。
この両方が重なると、もともと刺激に敏感な皮膚がさらに敏感になって、アレルゲンが皮膚からも侵入し始め、状態がより悪化するという悪循環に陥ります。また、かゆいからと患部を掻いてしまうことや、病状にあわない治療・肌の手入れ(スキンケア)が、皮膚症状を悪化させることもあります。
Q6 治療はどうするのでしょうか。また、治療で大切なことはどんなことでしょう?
治療は、①薬物治療、②スキンケア、③症状を悪化させる原因を取り除くことの三つが柱です。
局所の薬物治療では、ステロイド外用薬が主として使われます。ステロイド薬は作用の強さによりいくつかのタイプがあり、症状・部位・年齢などによって使い分けられます。かゆみを抑えるためには、抗ヒスタミン薬や、抗ヒスタミン作用をもつ抗アレルギー薬が処方されます。合併症で皮膚の感染症がある場合は、抗生物質なども必要です。
スキンケアとは、皮膚をより正常な状態に近づけるために行う管理のことです。乾燥しやすくなっている皮膚を保湿剤で潤したり、刺激の少ない生地の下着類を着用することなどがあてはまります。
症状を悪化させる原因には、食べ物やダニなどのアレルゲンが関係している場合以外にも、ふだん身につけるもの(下着や靴下、アクセサリー、化粧品、香水など)、皮膚の洗いすぎや掻き癖などの行動パターンなど、さまざまなことが考えられます。それらのなかから丹念に症状と関係していることを見つけ、対策を立てていきます。
アレルゲンを見つける手段として、血液検査などの検査も行われます。ただし、検査で必ずアレルゲンを特定できるとは限りません。
大切なことは、症状によって治療法(使用するステロイド薬のタイプやその塗り方など)が異なるということです。その人、その時々の状態にあった治療を続けることが、症状改善のポイントです。それには通院を欠かさず、主治医の指示を守ることです。
精神的ストレスから症状が悪化することもあるので、ストレスの解消も大切です。そして、この病気と上手に付き合うためには、「早く治そう」と焦らず、心に余裕をもつのも一つのコツです。薬物治療やスキンケアなどの煩わしさはあっても、日常生活に大きな支障がないのであれば、治療はうまくいっていると考えましょう。
Q7 スキンケアが大切と聞きましたが、一番よいスキンケアの方法を教えてください。
一番よい方法は、患者さんそれぞれで異なりますし、同じ患者さんでも皮膚の状態や季節などによって異なります。例えば汗をかく夏にはせっけんを使ったほうがよいものの、冬はせっけんをあまり使わないようにする、といったことです。ときには、なにもしないことが一番よいこともあります。
このため、「スキンケアはこうしましょう」と、お手本を示すのはなかなか難しいものです。薬の使用法と同じく、主治医のアドバイスを受けることがなにより大切です。他人の体験談を聞いて真似をしたり、自己流のスキンケアでは、逆効果になりかねません。
Q8 卵や牛乳、大豆製品はよくないそうですが…
卵や牛乳、大豆製品は確かにアレルゲンとなりやすい食べ物です。しかし、アレルゲンとなり得るものはほかにもたくさんありますし、アトピー性皮膚炎の症状は、アレルギー以外のことにも大きく左右されます(前述)。また、卵や牛乳、大豆製品などは、栄養バランスのすぐれた食品なので、症状との関連性を確かめずに摂取制限するのはよくありません。その食品が間違いなく症状の悪化要因であると確認された場合のみ、摂取を制限します。
Q9 アトピー性皮膚炎に効果があるという商品や民間療法がありますが、試してみてもよいでしょうか?
アトピー性皮膚炎は、慢性の病気で患者数も多いため、アトピービジネスといわれる商品や民間療法がたくさんあります。それらを試したくなったら、まず主治医に相談しましょう。アトピー性皮膚炎の症状は十人十色なので、ある人には効果があっても、別の人では悪化することもあるからです。そして、治療の基本は薬物治療とスキンケアであることも忘れずに。
かゆみ対策 Q&A
Q10 「かゆくても掻いてはダメ!」といわれるのはなぜですか。眠っている間に、どうしても掻いてしまうようなのですが…
じんま疹もアトピー性皮膚炎も、患者さんを悩ますのは「かゆみ」です。ただ、かゆいときにボリボリ掻くと、かえって刺激になって新たなかゆみを引き起こします。とくにアトピー性皮膚炎の場合、皮膚のバリアー機能がさらに低下し、より小さな刺激でも皮膚が敏感に反応してしまうという悪循環を招きます。寝ている間に掻いてしまうのなら、爪の手入れをこまめにし(やすりで削って角を落とす)、手袋をして眠るなどの工夫をしましょう。
Q11 かゆみ止めの薬は眠くなるので飲みたくありません。なにかよい方法はありませんか?
かゆみ止めとしては通常、抗ヒスタミン薬が処方されます。この薬は中枢神経にも作用し、その副作用で眠気を催すことがあります。しかし近年は、眠気の副作用がない抗ヒスタミン薬が使用できるようになりました。「眠くなるから薬を飲まない」のではなく、ぜひ医師に相談してみてください。
また最近の研究では、薬によっては、患者さん自身が自覚しない眠気(作業効率の低下や反射速度の遅延など。インペアード・パフォーマンスと呼ばれています)が起きることもわかってきました。もし、試験勉強中だったり、車を運転するのなら、あらかじめ医師にそのことを伝えておくとよいでしょう。
なお、かゆみは冷やすことで和らぎます。よく絞った冷たいタオルをあててみるのも一つの方法です。
Q12 かゆみなどの症状が治まったら、薬の使用(服用)をやめる(中止する)ほうがよいのですか?
症状が治まっても自己判断で使用をやめてしまうと、症状が悪化することがよくあります。その繰り返しのために、病気が長引いていることも少なくありません。医師に処方された薬は、次の通院時まで指示どおりに使用してください。
Q13 なにかほかにアドバイスがあればお願いします。
皮膚への刺激を減らす工夫、皮膚刺激物やアレルゲン回避のための注意などをまとめて紹介します。
衣類 下着はなるべく木綿製、上着もできるだけ柔らかい生地のものを選ぶ。洗濯時はよくすすいで洗剤が残らないように。
入浴 肌をこするのではなく、せっけんの泡で軽く洗うような感覚で。せっけんが残らないよう十分洗い流す。湯船の温度はぬるめに。入浴後は保湿剤などによるお肌の手入れを。
寝具 枕カバーやシーツは柔らかい素材のものを。布団や枕はよく干し掃除機をかける。
食事 香辛料など刺激の強い食べ物は控えめに。アルコールはほどほどに。
住まい こまめに掃除をしたり、通気をよくするなどで、室内細塵(ダニなど)を減らす。
その他 汗をかいたら早めにタオルを当てて吸いとる。化粧品は多用しない。長い髪は結わいて顔や首筋にかからないように。アクセサリー類は身につけないほうが賢明。ストレスがたまらないようにする。
この記事は冊子「わかりやすい病気のはなし」シリーズ17『じんま疹・アトピー性皮膚炎』(2001年12月発行)をもとに作成しています。